辻仁成 – オキーフの恋人 オズワルドの追憶

ものすごい大作やった。物語の面白さも小説としての巧みさも読み応えも十分。すばらしい!!

新たな連載をはじめる大事な時期なのに失踪し てしまった大作家を捜すはめになってしまう出版社の編集者が主人公の「オキーフの恋人」という物語と、その大作家が連載する探偵小説「オズワルドの追憶」 (小説中小説というのか?)が順番にあらわれるという構成の長編小説。上下巻で1200ページぐらいあった。

上巻において最初は同時並行 に進む両方とも魅力的でそれぞれ面白い物語たちであるが、下巻に進むに従って「オズワルドの追憶」が「オキーフの恋人」に侵入していく。そのあたりからの 明らかになっていく物語の本当の姿や、そのスピード、どんでん返し、そして物語の結末がすごくおもしろい。そこまで長くかかって発展していった物語が最後 にはじけ、「生きているということはなんなのか?」という作者からの問いかけが浮かび上がってくる。

うまく書けないけれど、「人にとって の人生の実感となる記憶とは何か」「人が生きているということは何をもってなのか」などという生きていく上であまりにも身近過ぎ、また当たり前にあるもの すぎて考えもしないこと、そして、「神とは何か、悪魔とは何か」「正義とは何か」というような、多種多様な価値観が同時に存在している世界にとっていちば ん厄介な問題(誰しもが自分が正義であるからゆえ)をテーマに描かれいると思う。

含蓄多い言葉やエピソードや、なるほどとうなってしまう台詞がたくさんあって、何がいいかなんて選べない。辻さんの本でも今までのなかで1、2争うぐらい好き。

オキーフの恋人 オズワルドの追憶〈上〉
オキーフの恋人 オズワルドの追憶〈上〉
オキーフの恋人 オズワルドの追憶〈下〉
オキーフの恋人 オズワルドの追憶〈下〉

 

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