村上春樹 – 雨天炎天―ギリシャ・トルコ辺境紀行

村上さんのこういう旅の文章ってほんとおもしろい。普通の紀行文とか旅の記録みたいなのとは実に違ってるから。なによりもあくまで主観的立場を貫き続けられる姿勢(当たり前か)、全体的なことより自分が見て感じたあまりにも細かいディティールに関する考察の多さ(笑)、そして文句が多いこと(笑)。もちろん村上さんには会った事ないけれど、人柄がにじみ出てるし、ちょっと意固地インテリっぽいところさえ素敵。

前半はギリシア正教の聖地アトス(半島)の修道院を巡る旅、そして後半はトルコを車で旅する。もちろん行ったところのことのみ記しているけれど、そこで見聞きしたことから村上さんを通して文章としてつづられるこの2つの場所の魅力とまったくそうでない部分、人々の暮らし、国というシステム、日本にいる間には絶対理解できない生き方、そんなものが克明に、かつちょっとひねくれて描かれていて楽しい。でも楽しいだけじゃなくて、ふーんと感心したり、行ってみたくなったり。

この人が書くと「実にしようもない場所である」と書かれたとしても、行ってみたくなっちゃうから不思議。

新潮文庫 1991

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