菊地成孔 – 憂鬱と官能を教えた学校

分厚かったし、内容が濃かったので読むのに時間がかかった。以前読んだ「東京大学のアイバート・アイラー」の2年ほど前にさる美学校で短期間開講された菊地氏の講義の実録。いわゆるバークリー・メソッドとそれを取り巻く商業音楽を俯瞰し、20世紀の音楽の歴史をたどっていく内容になっている。

「東京~」よりはぐっと実学に近い内容になっていて、いわゆる音楽の理論専門書のような難解なものではなく、歴史の時間軸に沿って、どうしてそんな音楽が生まれ、それを理論体系化していったのか、そこから生まれたものは何であったのか、なんてことをそこかしこで脱線しつつ解説していく。菊地氏の軽妙な話術と言葉に魅了されながら、あぁこんな講義受けてみたいなーとつくづくおもう。

確かに音楽の素養がまったくない方にはかなり難解かもしれないけれど、少し(とくにジャズ寄りの)音楽理論等に興味がある人なら、十分読めて楽しめるとおもう。また単に音楽理論とその中身というと、えてしてつまらないものになりがちだが、ここでは20世紀以前の音楽の歴史から20世紀の商業音楽の成り立ち/変遷を見ながら、音楽理論(ここではバークリー理論)がどう立ち上がっていったか、そしてその中身はこうこう、みたいな順で話が進むので、表層だけさらっとさらうといっても、全体を体系的に知ることができるので、とても勉強になる。この本からもっと知りたい人は自分であちこち的を絞っていけるヒントや雑学がたくさんちりばめられているのもうれしい。

音韻と音響。言語と律動。なるほどなーとおもうことがたくさん書かれていた。いままで「どうしてあんな曲が思いついたりできるのか?」とおもっていた謎が少し解明されたような。

菊地さん、もっと本出してください!

河出書房新社 2004

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