有川浩 – クジラの彼


有川さん2冊目。表題作を含む6つの短編集。この本の前に別のシリーズがあってその後日譚やらいろいろなのだが、共通する話題は主人公もしくはその恋人、または両者が自衛隊員という設定、そしてラブコメ!ありそうでなかったパターン。

あくまでラブコメなのだが、潜水艦やら輸送機やらというメカメカした描写が出てきたり(自衛隊だし)、”国防”やら”駐屯地”のような普通こんな話には出てこない言葉でてきたりして、もしかすると文章自体がとても読みづらくなりそうなのに、説明も描写もちょうどいいぐらい余計でも足りなくもなくすごく読みやすい。んで、おもしろい。一般の人が読んだらすごく自衛隊やらこういうメカやら国防やらに興味湧くんじゃないかな?見事としかいいようなし。

「阪急電車」読んだときは、すっとしたさわやかな小説書く人なのかなーと思っていたけれど、いやいや、もしかして、結構オタクの気がある人なのかも?と、ちょっと親近感。また自衛隊の話ばかりでなく、メーカーにいた人間にとっては興味の湧く設計の話やら、女性の職場問題やら、いろんな要素がさらっと描かれていて、その視点と構成とさりげなさに感心ひたすら。

あと、今回は登場人物たちの台詞に加え心の台詞がどばどば書かれていて、普通ならこれめちゃ読みにくいのに、言葉の選び方とテンポ感(実際人がリアルに感じるぐらいのテンポ感)ですらすら読めるのも不思議。人って、口に出すこと考え感じること/それらを客観的に見る自分、てのが常に対比して存在してると思うのだけれど、この物語たちに出てくる人たちはいちいち客観的なほうが過分で、そこがなんかコミカル、男も女も可愛い。

有川さんは知人の話やら、取材やらして物語を書いたそうなのだけれど、もしかして自衛隊にいる人たちって頑固で畏まって融通利かないイメージばかりあるけれど、ほんとは純でやさしい人多いのかな。じゃないとまっすぐに国防なんかやってられないのかもな。

なんせおもしろくて一気に読んでしまった。このシリーズのほかの本「空の中」「海の底」「ラブコメ今昔」全部読みたーい!

恥ずかしながら今回あとがき読んでようやく有川さんが女性だと知りました。。。道理で読んでて楽しいわけだ。

角川文庫 2010

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