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江國香織 – いつか記憶からこぼれおちるとしても


たとえるなら江國さんの紡ぐ文章というものは、ひとくちで食べられるほど小さな、でもゆっくり味わえばほのかにでもはっきりとしためくるめく香りと味を楽しむことの出来る甘いお菓子のようなものなんじゃないかなと思う。一見するするっと流れる文章のなかに突然現れる確固たるおかしなテイスト(でもそれがおかしくは感じない)や、はじまった瞬間から周りの音が消えてなくなるほど隔離され確立された孤独感や、ゴール間際になって初めて思い知る長いゆがみの曲線たち。それらの香りや味がたくみに(それが狙ったものなのか、自然に生まれるものなのかはともかく)並べられ、一口くちにいれた瞬間から江國さんの世界のとりこになってしまう。

あと、漢字とひらがなとカタカナの選び方、バランスが絶妙だと思う。とくに好きなのは「ずぼん」そして「りぼん」(この物語には「りぼん」が何度も出てきた)。往々にしてカタカナで表記されやすいこれらのことばをひらがなにしたときに、その音のおもしろおかしさや、すこしだらっとした感じや、かわいらしさを醸し出せることを知る(「ぼん」という発音がそうさせるのかも)。割とひらがなが多いのはきっと本人のくせもあるのだろうけれど(女の人の独り言に含まれる子供っぽさのよう)、本を開いたときの文字がつくる模様が、がしがしした感じがしないためかも。物語もそうだけれど、目に触れる形としてもあまりひっかかりがないようにしている感じがする。

さて、この物語は女子高生たちの初冬のちょっとした物語たちだ。まだ大人でない分、素直にそして残酷になれる彼女たちの姿がさらりと描かれている。こうして彼女たちは生きているのだろう。何かを訴えることもなく、とくにおおきな事件が起こるわけでもなく、結論が生まれるわけでもないけれど、その6つの短編を読んだ後にはなにかほのかに心がわさわさする感じが残る。でもそれを確かめようとするとはかなく消えてゆく。これが江國さんの魅力なのか。

個人的にはひとつめの短編「指」が好き。

装丁の黒猫(白いソックスを履いている)がかわいい。

朝日文庫 2005

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