重松清 – ビタミンF


重松さんの作品ふたたび。今回も短編7編からなる本。40前後の若くもなく、父になり、息子や娘や妻がいて・・・という男が主人公の物語たち。家族との(とくに子供たち)間でのぎくしゃく、仕事、生活、何もかもがまだ中途半端な感じの中年男の悲哀がいろいろ描かれる。

いつのまにか丸くなってしまった握りしめた手、とてもヒーローにはなれないけれど・・・「ゲンコツ」、妻が入院してしまい息子とぎくしゃく「はずれくじ」、万引きした娘と父「パンドラ」、優等生の娘が仲良くしているというクラスメイト「セッちゃん」、若い頃の約束を追いかけて「なぎさホテルにて」、よくできた自慢の息子と娘だと思っていたのに本当のことは見えてなかった「かさぶたまぶた」、ずっと前に離婚していた母から連絡が「母帰る」。どれも好きだけれど「はずれくじ」「母帰る」は好きだなぁ。

やるせない気持ちになるけれど、どこか心がほんわりする物語ばかりだった。いい本だな。直木賞受賞作。

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