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有川浩 – レインツリーの国


山本弘氏による解説を読むまでなんとなくしか気づいてなかったけれど、この本のタイトル、同じ有川さんの「図書館戦争 図書館内乱」のひとつのエピソードにでてくる(架空の)本のタイトル。主人公の上官のひとりである小牧と幼なじみの難聴をもつ少女毬江の物語。そしてこの有川さんの物語も健聴者と難聴者の恋の物語(図書館戦争〜の中で小牧は毬江にこの本いいよと薦めた、なるほど)。見事にお話が入れ子になっていて素敵。さらにこのお話の中で主人公・伸行とヒロイン・ひとみが出会うのもある小説を通してのこと(しかもネットで)。このある小説のあらすじもやはりこの「レインツリーの国」とうまくだぶらせている部分があって、これまた素敵。有川さん見事です。

このお話もやはり有川さん、思いっきり恋のお話だけれど、今回は甘々ではなくて、ツンデレでもなくて、ちょっと厳しい恋。「図書館戦争シリーズ」の’床屋’と’理髪店’の下りを読んでいるような気分になった。知識としては知っているけれど(もちろん身の回りにもいないことはない)難聴者のこと。普段は何も気にせず「あ、耳が悪いのね」程度にしか考えてないけれど、ここででてくる、途中失聴/難聴/聾/聾啞の違いなんて知らなかった。知ってたとしても区別できないし、ましてやその人たちの立場を想像することなんかできるわけがない。でも有川さんはそれを(禁止語のときと同じく、これはメディア的にはNG的ネタだ)真正面から描き、「難聴の人は物語のヒロインになれないの?」といわしめた図書館戦争の毬江の台詞をまたここでも投げかけてくる。僕も含めた健常者(この言い方もおかしい気がする)なら、目を閉じて、蓋をして通り過ぎてしまいたくなる、知りたくない考えたくないと心のどこかで思っていた部分を明るい場所へもってきて、そこには違いがあるだけで優劣はないし、ましてや区別されるものではない、と教えくれた。

有川さんのこれらの本のほんと素晴らしいと思えるところはこれらのやもすれば重たい話題を「恋」というフィルターを通して知識としてではなく、感覚として説いてくれる部分じゃないかと思う。これらのことを論文然と書かれたら面白くないと思ってしまうけれど、有川さんのように楽しく哀しい物語として描いてくれたら、お話として楽しめて、そして彼らの気持ちになってこういった事柄に触れることができるんだと思う。勇気と根気をもって書いてくれて、そしてまた新しいことを教えてくれて、ありがとう有川さん。

新潮文庫 2009

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