田中啓文 – チュウは忠臣蔵のチュウ


田中さんの時代小説(?)。ある人から「あれはオモロいぞ」と薦められて読んだ。忠臣蔵自体ぼやっとしかしらないので、あとがきで書かれているようにぼくらが何となく認識してる忠臣蔵(浅野内匠頭の吉良上野介に対する刃傷事件ー>浅野内匠頭の切腹ー>浅野家家臣 赤穂藩の大石内蔵助による討ち入り&吉良成敗)というのは骨子はそのままでも史実とは実はだいぶ違っていて、それはどうやら江戸〜明治時代に流行った講釈(講談)の影響がおおきいそう。赤穂義士たちの各々の物語なんてきっとあとから付け足されたものだし、討ち入りに関しても実際どうだったのかは実はわからないそう。それほど歴史的記録が残っていない。でもあの時代にあの事件はものすごく話題なったはずで、歌舞伎になり、講談になりで、物語はすごく広がったんだそう。

で、このお話、その史実が実際どうだったかというところを逆手にとって(?)あらたな展開を持ち込んでいるのがおもしろい。上述のような背景があることを知らずに読み出したので「また田中さんめちゃくちゃな話作り出したな」とほくそ笑んだのだけれど、これがウソだったかどうかなんて誰も分からない訳で(笑)。なんせ内匠頭は切腹を免れているし、さらに吉良は討ち取られてないし(これ以上かいたらネタばれになるな)、その陰にはあんな人やらこんな人が暗躍して、、、いやいや立派な時代活劇です。

田中さんの本にしては(?)わりとふつーの創作っぽい感じで、めちゃくちゃな無理矢理感も、脳天につきささってくるようなギャグもないのだけれど、逆に普通に楽しく読めた。いつぞや読んだ宮部さんの赤穂浪士ものといい、この辺りの話っておもしろいなぁ。

文藝春秋 2011

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