宮崎駿 – シュナの旅

宮崎さんの映像作品にはたくさん触れたことがあるけれど(ジブリ作品や、それ以前の監督やら作画やら設定やってた作品も好きだ)、著作物はあんまり触れたことがない。ナウシカの原作を何度も読んだぐらいか。今公開している「風立ちぬ」を最後に長編作品はもう手がけないと言った宮崎さんのことをもっと知りたくなって、いくつか著書や漫画を入手している次第。

その中のひとつがこの作品。1983年に描かれた漫画だから宮崎さんが42歳のとき、いまの僕とそう変わらない。いろいろテレビ界やら映画での作品をつくってきていて、映画「カリオストロの城」の後、「風の谷のナウシカ」の前、並行してナウシカの連載が断続的に行われていたころか。

宮崎さんの絵はいつもまるみが気持ちいい。手塚治虫のきっぱりした丸さとはちがって、もっと素朴な丸さというか。また鉛筆書きなのが(きっと彩色も水彩だろう)とてもいい。お話としてはチベットの民話をもとにつくったそうだれけど、今読んでみると、ナウシカ的な風俗/時代/地方設定(人里離れた谷に住んでいたり、着ている服の感じやら)と、もののけ姫のストーリー骨子(主人公が西へ向かうことになったり、乗っている動物がヤックルだったり、神々が住む森にたどり着いたり、銃が草木に覆われているところも)をくっつけたような感じだったり、たどり着くところがラビュタの設定ぽい(パズーが住んでいた家みたいだったり、おばあさんがドーラに似てたり)なんて感じで、いろんな作品を見てきたからこそ気づくけれど、当時はまだこれらの作品は世になかったから、宮崎さんが内にもついろんなお話やおぼろげな映像やらなんやらの種がここにあるんだと思うと、じんとしてしまう。この頃からその先生み出す作品たちをたくさんイメージしていたんだろうな、と。

逆にいうと一貫したイメージがあるから、それ以外がなかなか難しかったのではないかと思わなくもない。でもまぁこの作品みただけで宮崎さんのいったいどれほどのものが分かるのか、なんて分かるわけない。でも、この人がどんなこと考えていたのかはとても知りたいのだ、いま。

そんなに長い作品ではないけれど、じっくりゆっくり味わって読める作品でとてもよかった。ただ、コマによっては絵の色使いとの兼ね合いで(もしかしてわざとなのか?)挿入される文章が非常に見にくい箇所もある。でもいいけど。

アニメージュ文庫 1983

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