ゲルハルト・オピッツ Gerhard Oppitz

20131118-1

もともと音楽に触れ始めたのはクラシックで(母親が好きだった)家では聞いたりするけれど、最近は全然コンサートとか聴きにいくチャンスがなく(同じ時間帯の仕事ですから)つまんないなーと常々思っているので、たまの休みの日とかによさげなコンサートがあれば以降と思ってるのです。で、昨日お休みで用事も夕方からだったので昼間ならどこかいけるなーと(大概週末はコンサートはお昼です)思って探していると(関西クラシック音楽情報というサイトを愛用しています)ゲルハルト・オピッツ氏のピアノ・リサイタルが。といっても特に彼のことは知ってる訳ではないのですが、以前NHKのピアノ番組にも出演されていたこともあり、その時の印象がとってもよかったので、じゃあ聴きにいってみようと思ったのでした。

川西にあるこじんまりしたホールでホールの自主企画としてのコンサートだったようで、なんだかアットホームな雰囲気の中コンサートは始まりました。オピッツ氏もすごく温厚そうな人柄で、出てきただけで「あ、来てよかったな」と思えたほどでした。

たましか来ないこういうコンサート(クラシックの)に来ると思うのですが、最初は「音ちっさー」と感じます。ピアノといえどああいうマエストロが弾くと音は小さいはずはないのに。でもそれは如何に普段やかましい環境にいるかということの証明で、しばらくすると前からしか聴こえてこなかったピアノの音が(それはオケでもそうなんだけれど)全身を包むように聴こえてきます。ほんとうに小さな音までよく聴こえるようになる、ということなんでしょうね。普段の生活は家も外もどこでも基本的に音が大きいので、きっと耳がバイアスをかけてるんじゃないかと思います。それがこういうコンサートホールの音量になれてくるともっともっと小さな音も聴こえる/聴くようになるんだと思います。普段まったく気にしてないことだけれど(家では極力静かにしているつもりなのですが)こういう場で気づかされて驚く、と。

で、コンサートはベートーベンのピアノソナタを4作品だったのですが、どれも素晴らしかったです。ま、聴いたことある曲ばかりというのもあったのですが。最初は上述のような理由で「あれ?」とか思ってしまいましたが、慣れてくるに従って完全に没頭してしまえました。気持ちいい音に浸りきるのもよし、曲の流れを楽しむのもよし、オピッツ氏の落ち着いた弾きっぷりに感心するのもよし、素敵でした。

やっぱり(これは完全に偏見ですが)僕は割と年齢を重ねた男性の演奏が好きです。落ち着いているというか、きぃきぃしてないというか。どんなアクロバティックな曲でも落ち着いて聴いてられるし、何より音が好みなんでしょうね。そして何より、ああいう人たちのなんと無駄がなく自然で、そして確信に満ちた演奏に打ちのめされてしまいます。巧いとかいい音だとかいい曲だとか、そんなことよりも、かくあるべしと曲が存在する感じ、そんな堂々たる態度で演奏できる彼の、それらを裏打ちする完璧な技術と哲学や思想、そんなものまで(勝手な想像ですが)が大きな世界として目の前に屹立する、そういうことに感動します。同じ音楽やっててもなんと自分のちゃらいことか。せめて少しでも何か近づけたらと思います。常に思ってることですが、改めて強く思いました。

終演後、ミーハーにもCD買ってサインしてもらったのですが(好きなのもあって聴いたことないけどブラームスのピアノコンチェルトのもの)、そのCDを差し出すと「ああ、このCDを録音したの懐かしいです。」とおっしゃいました。20年前の録音なのですが、そのときバイエルン放送響を指揮したサー・コリン・デイヴィス氏が今年亡くなったのでした。しばしじっとジャケットを眺めるオピッツ氏が印象的でした。

また聴きにいきたいと思いました。今度はブラームス聴かせて欲しいなぁ。でも次の来日のときにタイミング会うかなぁ。今回も関東ばっかりだし。

オピッツ氏と
オピッツ氏と

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