池井戸潤 – オレたち花のバブル組

「オレたちバブル入行組」につづく、半沢直樹シリーズの2冊目(だと思う)。金融庁の検査の話がひとつのテーマなのでテレビドラマだったのはこっちかな?投資で損失をだしてしまった老舗旅館の再建を押し付けられた半沢。そこに金融庁検査がやってくる。旅館の再建策がうまくできなければ金融庁検査をかわせず、銀行は損失を負うことになる。銀行の内部は相変わらず銀行のためではない派閥争いや個人の権力ための人事によって半沢の邪魔をするものも。こんな状況をどう突破するのか?

最近では落ち着いた感があるけれど、一時銀行の統廃合がたくさんあった。あまりにも統廃合があったのでもとの銀行の名前がわからないほど(逆に東京三菱UFJみたいな変なのもあるけど)。外から見てたらわからないけれど、この物語で描かれているように統合による銀行内の軋轢というのは相当なものがあるだろうし(そもそもシステムを統合するのってすごく難しいはず)、元どちらの銀行かという争いもあるだろう。そんなことは利用者には関係ないのにそれによって間接的に利用者が損というか迷惑を被ってるかもしれない。

それといまはどうなのかしらないけれど金融庁との関係。国と大企業との関係もそうだと思うけれど、ある程度なあなあなところもあって仕方ないかもしれないのだけれど、ここで描かれる金融庁検査もそのひとつのよう。まあ話はとぶけれど国会も予定調和的なとこがあるのか、同じように見えてしまうけれど、”抜き打ち”とか”予定外の質問”なんてのはあってないような感じ。官公庁とそれに守られて来たものたちの癒着。

そんななかで、銀行マンとは何か?というものの本質を体現するかのような半沢の活躍はおもしろい。もちろん話の中でこういう業界の裏側(ぼくたちが知ることのないような面ね)を垣間みるのも楽しいけれど、大きな権力と個人的なネットワークとの戦いとか、大企業と下請けとか、池井戸さんの描く図式はある意味分かりやすいパターンでいい。でもその分かりやすいパターンをつまらなくならないように作るのは難しいことだとおもう。そして面白くて最後までざざーっと読んでしまえるのも、池井戸さんのすごいところだと思う。

今回は半沢まわりの銀行内での戦いと、同期で出向している近藤の戦いの2つの話がうまく重なり合うようになってて構造が立体的になってて面白い。そしてやっぱり読者は弱者の見方。悪しき強者がやっつけられるのはもちろん面白い。よくみたらかなり過激な人間であるのに半沢を応援したくなるのよね。ほんと魅力的なキャラ。

文集文庫 2010

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