奥田英朗 – 東京物語


1978年、名古屋出身の18歳の青年が上京する。なれない大都会、学生時代の淡い恋、仕事に追われるだけの日々、少し得意になっていてもまだまだと実感する20代半ば、そして30歳を前にして思うこと。友人と、恋人と、仕事の仲間と過ごす青春の日々。そのときどきにはその時代のトピックがあった。ジョンレノンの射殺、キャンディーズの解散、ベルリンの壁崩壊などなど。80年代を経験した人は(そうでないひとも)あのころのことを追体験するような時代の匂いがする小説。

奥田さんの作品でも初めての感じ。これとてもいい。まあたんにこの時代が懐かしいからというのもあるのかもしれないけれど、バブルにむけて時代が大きく派手に動いていた時代、みんな忙しくも楽しく輝いて生きていた。なにもすべてが良かったというわけじゃないけれど。そういう気持ちをすごくよく思い出させてくれる。とくにキャンディーズの解散は懐かしい、70年代が終わったって感じしたもんなぁ、幼かったけど何か変わるんだって感じた。

まあ20代ってほんと甘酸っぱかったり青春って感じで、誰も大なり小なりこういう経験してきているとおもうけど、僕らぐらいの年代の人間にはさらにその青春に80年代というのがかぶさると堪らない気持ちになってしまう。懐かしい、ほんと懐かしい。いい時代だったとおもう。読みながらあのころの空気の感じとか、街の変わっていく様子とか、音とか、匂いとか、いろいろフラッシュバックしてしまう。

またなんとなーく片岡義男っぽいところもあったりして(ブランド名の出てき方とか、服装の描き方とかとか)それもまた好きな要因かな。「彼女のハイヒール」なんてタイトルそのまんまぽいもんw

楽しかった。

集英社文庫 2004

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