上橋菜穂子 – 夢の守り人

上橋さんの守り人シリーズ三作目。人の夢を糧として育つ異世界にある花。そしてその花に誘われ次々に夢見たまま起きなくなってしまう人々。彼らは現実から逃避するために夢見ることを選んだのだった。そんな花に新ヨゴ皇国の第一妃、そして第一王子のチャグムまでが囚われてしまう。そして同じく幼なじみが囚われてしまった呪術師のたまごタンダは彼女を助けに行くのだが、逆に囚われその花を守るものに変化させられてしまう。

そんなタンダを救うべく立ち上がるバルサとタンダの師匠である呪術師トロガイ。ひょんなことからバルサが救った歌うたいユグノが実はこの一連の事件に深く関わっていることがわかる。この男の招待とは?明かされるトロガイの過去。バルサとトロガイはタンダやその他のものたちを救えるのか?

いままでの二作品も現実世界と並行して存在する異世界に関わる部分も描かれてきたが、今回はかなりどっぷり描かれているので、想像力がいるというか、ファンタジーだけれどファンタジーのなかにまたファンタジーがという感じがする。そういう現実でない世界にさらにその現実でない世界を混ぜ入れて、混乱しないように描けている上橋さんさすがだなぁ。

今回のテーマはほんと誰もが一度は思うような、現実逃避してこのまま眠っていたい、という願望。そして、でもそれは願うべきではなく、どんなに辛くてもちゃんと生きて進んでいくべきなんだ、という現実に対する生き方。「もうこのまま全て忘れて寝てた方が楽」なんて思うことよくあるのだけれど、そうしたって何も解決しない。ちょっと先に延びるだけだし大概自体は悪化する。勇気を持って前に進め、と上橋さんに言われた気がする。

養老孟司氏の解説がとてもいい。ファンタジーとは何か、ということにとても簡潔に、潔く書いてくれてる。養老さんの本も読んでみたくなった。

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