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三崎亜記 – となり町戦争

tonarimachi

久しぶりに感想を。このところ本は読んでるけれど感想を書く気力がなかった。

映画にもなったこの本。たしかにこのタイトルは知ってるけどどんな内容かはさっぱりしらずに読み出したのだけれど、、、、文章の色合いや語り口もだけれど、内容が思ってたのとは全然ちがってショッキングで、そして面白く、そしてなにより考えさせられるものだった。三崎さん、初めて読んだけど、他のものも読みたい。

ある日主人公北原の住む町の後方に”となり町と戦争が始まる”という旨の公告が掲載される。ところがその予定日になっても銃声はしないし、何か報道があるわけでもなく、平穏な毎日が過ぎていく。”戦争”といわれてもまったく実感できない。そんな中、町役場から”偵察”の任務を与えられることになった主人公はやがてとなり町にその戦争を推進している部署のひとりの女性と同居することになる。魅力的も不思議なこの女性・香西さんとの同居、まったく実感できずにどこかで進んでいるらしい戦争、その戦争を進めているらしい目の前の女性、自分もどこか加担させられているらしい状況などなど、日常のどこかにひそむ非日常の不確かさに悩み考える主人公。そしてある日その戦争の陰が主人公に忍び寄り、、、

全部内容書いちゃいそうなので途中まで。なんせテーマは戦争、もしくは人の死。もっというとそういう非日常と常々おもって暮らしている我々とその非日常の状態のつながりを見つめろ、もしかしたらすこし意識の隅にはあるけれど無視していたら日常を暮らせるので目をつむっていることを白日に晒す、ということなんじゃないかなと。

なんでもそうだけれど、とくに僕たちのような先進国と呼ばれるところに住んでいると、いろんなことが便利でなに不自由なく暮らしていけるのだけれど、その便利さ、不自由のなさがどこの誰に支えられているのかということは普段意識してないだろう。考えなくてもいいし。でもすこし考えたり調べたりすれば何かわかるだろう、ということは知っているはず。でも考えなくても不自由しないので、いつも意識下においてしまっている。

例えばそれが百均ショップの商品であったり、やたらと安いファーストフードであったりなら、すこし想像力を働かせるとカラクリが見えてくるかもしれないけれど、ことに人の死(命)となってくると想像の外になってしまう。ぼくもそう。

その昔(ともう言ってしまえるのが怖いが)湾岸戦争のとき、テレビの画面に釘づけになったけれど、あれはまるでゲームのようだった。画面を通してはなにもわからない。あの光の下で誰かが死んでいるとか。最近日常のようにどこかで起こるテロも、暴動も、北朝鮮が発射するミサイルと呼ばれてる代物でさえ、無意識に”ぼくとは関係ないどこかで起こっていること”と思ってしまっている。でも一方で”戦争はよくない”だの”テロの撲滅”だのというスローガンには賛成したりしてる。

しかしそんな戦争もテロも何かの諍いもモノが安かったりするの理由も、きっと脈々と繋がって、自分の足元まで来ている。すべての原因が自分だとはまったく思わないけれど、原因もしくは理由の一部に自分も加担しているのではないか、ということに気付けないし、思いもしないし、ましてや実感なんてない。間接的に人の命を奪っている可能性があることなんて。

すごくいまはこの小説に感化されてわーわーと書いているけれど、自分自身がまったく実感してない。でも実感してないってことを思い知らされただけで十分ショックだった。しかし、本当に実感するには目の前で、自分が体感するしかない、そうでないと自分の言葉では話せない、という内容のことを作者は物語の中で語らせている。それはきっと無理だし、体験はどちらかというとしたくない。そうやってまた安穏とした日常にひたって逃げてしまうのだけれど、でも確実にこの本はぼくの心に消せない波紋を起こした、と思う。

集英社文庫 2006
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