棟方志功 – 板極道

bangokudo

先日ある美術館で久しぶりに棟方さんの板画をみた。以前たまにいっていた宿にも棟方さんの作品がいくつか飾ってあって、その時からいいなあとは思っていたのだが、その美術館で久しぶりに見た棟方作品に衝撃を受け(華厳譜という作品だった)、棟方さん作品をもっと見てみたいし(やっぱり印刷されたものではなくて、実物を)、彼のことをもっといろいろ知りたくなって、まずは自伝ともいうべき本書を手に取った。

青森の鍛冶屋に生まれて、貧しいながらも絵筆をとって絵を描き始めた棟方志功。無頼でまっすぐな彼は、そのすさまじいエネルギーを絵だけではなく、字や、木版画にも発揮していく。やがてその才は大きく開花し、世界のムナカタとなっていく。その彼の半生を一人称で描いた自叙伝。

とにかく目の前で棟方さんがしゃべってるかのような、途切れのない、怒涛のような物語にすぐに飲み込まれてしまう。文章だけだと苦労もしたけれど、とってもうまくいった、って感じの人生に見えてしまわなくもないけれど、文章からも滲み出てくる、不器用さとまっすぐさ、尽きない熱意が彼の人生をそういうところへ持って行ったんだと思う。でも作品はもっともっともっといろいろ語りかけてくるように思う。この自叙伝からかいま見える彼の人間そのものの感じが。

優れた芸術作品は技術ややり方や考え方やらいろんなことを経て見え聞こえるものになるけれど、棟方作品はある点でその真逆をいっているんじゃないか。しかし同じものを指し示している部分がある、そんな風に感じる。迷いがなく、信念があって、無駄がなく、とてつもなく勢いと力強さがあって、その上で愛がある。そんな風に感じてしまう。そう感じる作品がいかに彼の中からでてきて、どう思ってそういう作品が出来ていった(彼は、生まれたという)のかもっと知りたい。禅、真言、いろいろヒントはあるけれど、まずは彼の言葉と作品からそれを感じてみたいと思う。

中公文庫 1976

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