白洲正子 – ものを創る

monowotsukuru

勧められて読んだ本。戦争でなにもかも失った時代。ものを創り出すこと、美しいものについて考えることを探し求め、芸術家や陶芸家、職人などを訪ね歩く。そして彼らと対話することによって、彼らが創ろうとしているもの、考えていること、作品との関わりなどを考察していく。かんたんにいうとただの訪ね歩き記なのだが。

世代もあるだろうけれど、ぼくらより二世代ほど前の方々のもの創りに対する執念・執着、そしてそれを観る目などについて、訪ね歩く人物たちを通して白洲さんが考察する。名前は聞いたことあるけれど、実際どんなひとかは知らない人たち(その筋では大成された方ばかりだが)が、彼らと親しかった白洲さんの目と耳を通してどんな人物で何を考えてものを創っていたのかを語ってくれる。無論作品を通してすべてを語ってくれることもあるだろうけれど、それは実物を見てみて初めて感じられることだろうし(写真で見てもさっぱりわからない)、それを創り出した人物を知っている白洲さんだからこを見えてくることもあるんだとおもう。どの人物についても興味深かった。北大路魯山人、浜田庄司、井上八千代、青山二郎、細川護立、黒田辰秋などなど。

一つのことを深く掘り下げること。ものの原点を見極めようとすること。そこに至るための道筋、技を極めること。これはもの創りだけでなく、ぼくのような音楽やってるものにも相通じる部分が多分にある。それはたゆまぬ努力の部分もあれば、深く考える部分もある。広く、簡便で、スピーディーな時代になると、こういうことは難しくなってくるように感じる。でも流されずに留まり、時間がかかっても成し遂げようとする、その気持ちと努力が何よりも大事なんだ(しかもそれは大声でいうことではなく、ひっそりと心の芯に留め置いて)と思わされる。何事も天才が成し遂げることではなく、努力と思慮の集大成なのだとおもう。

いい本だった。

新潮文庫 2013

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