「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」というサブタイトルが付いているとおり、外国を舞台にした音楽家(音楽)をめぐる人生の物語。
かつて名声を得た老歌手が妻への愛を歌うがそれは届くのか?「老歌手」、危機にある夫婦のもとへ友人が訪ねてくる「降っても晴れても」、仲睦まじく旅行に来ていたと見える夫婦音楽家の本音が語られる「モールバンヒルズ」、優秀なのにその風貌のために売れずそそのかされて手術をした先でスタートとの不思議な數夜を過ごす「夜想曲」、そして魅力的な謎めいた女性にチェロの手ほどきを受ける「チェリスト」。
音楽からみの話となっているけど、音楽そのものよりも、それをとりまく人々の悲哀を描く。夕暮れという時間を描写していなくても、どの話もどこかもの悲しげな感じをうける。それはどれもがハッピーである話ではないからか。これから先の人生があるとしても、その瞬間主人公たちはなにか人生の夕暮れともいえる時間にいる。その景色がもの悲しさを醸し出しているんじゃないかな。サックス奏者の話に関しては、ちょっとわかるなあ、と思うこともあり、自分に置き換えて自分ならどうするかなあとか考えたり。
訳は悪くなかったけれど、ちょっとだけ読みにくかった。音楽にまつわることって訳しにくいニュアンスもきっとあるよねえ。
ハヤカワepi文庫 2011