山本幸久 – ある日、アヒルバス

aruhiahiru

久しぶりに山本さん。名古屋への往復電車で読み終えちゃった。やっぱり山本さんの作品はいいなあ。心がキュンとする。甘酸っぱいけれど照れくさくなくて、そして登場人物たちを素直に好きになれる。、朗らかな気持ちにさせるお話ばかり。

春先から初夏までの東京が舞台。東京の街をめぐる観光ツアーを企画するバス会社「アヒルバス」。5年目になるバスガイド高松秀子(通称デコ)は頼りにしていた先輩が会社を去り、同期も2人だけになってしまい、ついでに新人の研修まで任されるはめに。鉄鋼母さんとあだ名される大先輩にしごかれながら、まだまだ半人前だと思っている彼女の泣き笑い、奮闘の日々。

東京の魅力を伝えるべく企画されたツアーには老若男女いろんな人がやってくる。彼らに翻弄されながらも忙しい日々を過ごす。地方から嫁探しにきたらしい男たち、学生時代からつづく女友達の老女たち。やたらダンディーなおじさん、カップル、お一人様の女の子。彼らはそれぞれにバスツアーを楽しむ。そんな中デコは東京出身(でも八王子)ながら、自分でも東京の魅力をわからずにいる部分も。

単純な成長の物語でも、ドラマチックでも、大きな成功の話でもなく、日常の少し延長、もしかしたら隣にいるような人の人生を垣間見てるような気にさせてくれる山本さんの作品は、すごくわかりやすくて単純なお話と一言でいえない魅力がとてもある。なんだろうこの共感できる具合は。憧れとかそんな感じじゃなく、読者と同じ目線で、まるで読者の経験にもあることのように描くからかなあ。いつもホッとしてホロリとされる。

ちょうど春先のお話だったので、車窓から見える桜と相まって、懐かしい、胸が少し熱くそして寂しくなる感じがした。いいお話。つづきもあるみたいなのでいつか読みたい。小路さんの解説もとてもいい。

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