乃南アサ – ニサッタ、ニサッタ

最近ちっとも読んでなかった乃南さん。どっちかいうとこのところはコロナや政治に関するTwitterのつぶやきをいろいろ見たりしていた。この本はたまたま友人が譲ってくれたもの。

「ニサッタ」とはアイヌ語で「明日」の意味だそう。北海道出身で東京にあこがれて学生として出てきた主人公耕平。平凡に大学を卒業後就職するがやめてしまい、ようやく転職したが、勤めてそう経ってないときに社長がトンズラ、会社は倒産して失業する。その後派遣会社に登録するが紹介されるどの仕事も長続きせず、やっとつかんだ塾の事務もアクシデントから首になってしまう。

すっかりやる気をなくし逆転をかけてギャンブルに手をだしたところたまたま大当たり。しかし近づいてきた女に騙され、すべての財産を奪われてしまう。そしてそのままギャンブルにのめり込んで借金を膨らませてしまいニッチもサッチもいかなくなる。

借金をだ変えた彼はようやく住み込みの新聞配達の仕事を見つけ、なんとか借金を返しながらささやかでもいいから真っ当に生きていこうとする。ようやく仕事にも慣れてきた時、後輩に女の子が働きにやってくる。何もこんなキツイ仕事のところにこなくてもと思うのだが、彼女は何も話さない。

上下巻に亘る長編の物語。この耕平のツイてなさ、そして我慢力のなさにほんと読みながらうんざりしてしまうのだけれど、ちょうどこの4-5月のコロナ禍による強制的な休業で気分的に凹んでいた僕には、どこかシンパシーを感じるとともに、自分を見ているみたいで嫌だし怖くなった。たまたま僕はここまでツイてないことがないだけで、一歩間違ったらどん底に行ってしまうのは前から想像しているので。なんの保証もないし。たまに道端で寝ているレゲエのおっちゃんたちを見ると「あれはいつの日かの自分の姿、一歩間違ったら立場は逆かな」とか思ってしまったりするので。

そんな全く救いのない、ありそうでまた落ちて行く耕平を見ているとなんともしんどい気分になるのだけれど、東京での生活に見切りをつけた彼が生まれ故郷に戻って再起する姿は嬉しかった(でもやはり、、、なんだけど)。

テーマとして横たわっているアイヌ、そして琉球、そして移民。僕はどれについてもまったく知らないことばかりだけれど(アイヌと琉球民族はものすごく昔一緒だったんじゃないかとは想像したりするけど)興味あること、知りたいこと。それをもう少し知るにはこの「ニサッタ、ニサッタ」の前の話(耕平の先祖が移民でやってくる話)である乃南さんの「地のはてから」を読まねば。

講談社文庫 2012

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