R.I.P. 細川正彦さん

2019年1月 放出Dear Loadにて

先日旅先で受けた連絡は、ピアニストの細川さんの訃報だった。突然のことにしばらく呆然としてしまった。

実は細川さんとは10回も顔を合わせていない。初めて顔を合わせたのは8年前の熊本。ベースの教秀さんと九州ツアーをするにあたって、何人かの現地のミュージシャンとブッキングしたのだけれど、その中に細川さんがいた。教秀さんとは音源つくったりいろいろ古い仲だったよう。初めて会った細川さんは熊のように大柄で、情熱的で、物知りで、よく喋る、少し神経質そうな印象の人物だった。その風貌からてっきり九州の方かと思ってたけれど東京の出身といわれて驚いたのを覚えてる。

彼のピアノは独特で、あの風貌からは想像できない細やかで色彩豊かなハーモニー、ダイナミックさ、緩急の振れ幅がすごく大きくて、いわゆるジャズピアノの範疇に当てはまらない感じで、かといってクラシカルでもなく、ほんとザ・細川スタイル、という感じ。普通のフォームの曲をやってると逸脱するときもままあって、デュオでやっててもたまに「どこやってるんだろ?」ってなることもあるけれど、音楽自体が壊れることはなく、彼の中で聴こえる音に素直にやってるんだろうなといつも思っていた。なので彼との演奏は(主に最近はデュオばっかりやっていた)常に刺激的で挑戦的なものが多くて楽しかった。

共演の回数は数えられるくらいだし、共有した時間は短いものなのに、細川さんの印象は僕に強烈に焼き付いている。こういうのはその長さとかじゃなくて濃さなのだろね。確かに彼との演奏はとても濃密な時間だったし、その音楽性にとても影響されたのだと思う。のめり込みすぎると周りが聞こえなくなったり、譜面より自身の瞬間の感覚を優先したり、たまにピアノの音よりうめき声が大きくなったり、、、苦笑することも多かったけれど、僕は全て含めて素敵だと思う。彼のオリジナル曲も内省的で素敵だったな。

うどんが好きで、香川のどのうどん屋がいいか?あの店は今回こんなんだったよ、とか情報交換しつつ、いつか一緒に香川を巡ろうといいながら叶わなかった。よく食べよく飲み(だったよな?)よく喋るひとだった。彼のブログを見てもそうだけど、いつも頭がフル回転してる感じだった。音楽も詳しいけれどあまりにも突っ込みすぎるので煙たがれることも多かったのかなと思うけれど、ジャズに限らず音楽を深く愛してたんだろうと思う。たぶん人に対しては不器用で相手をいろいろ選んだと思うけど、そんな中いつも関西に来るたびに声を掛けてくれて、今年は沖縄へ来てもらいたいんだよー、と言ってくれててとても嬉しかったけど、それも叶わなかった。

せめて最後が安らかなものであったならと。細川さん、いつまでも忘れられない人です。また会って話して演奏してくださいね。ご冥福を。

コメントを残す