乃南アサ – ヴァンサンカンまでに

これが15年前に書かれた本だったとは読み終えて解説読むまでまったく気が付かなかった。それほどまでに話の中で描かれている世界の新鮮さというか普遍さ、いや、いまだからこそよりリアルに感じられるそのストーリーに、ただただ感心してしまう。

いい恋、いい結婚、いい男とは何?どこにあるもの?それを追い求めるというのは、それ自体がバカなことなのかもしれない。そこには「いい」「悪い」という尺度なんてものはないはず。それに気づかずに、単に「いい」というものを形から追い求めると・・・

なんて考えさせられる、作品でした。一気読み。

新潮社 2004

乃南アサ - ヴァンサンカンまでに
乃南アサ – ヴァンサンカンまでに

八二一 – hatch!―はっちゃん日記

カリスマ?モデル?猫、はっちゃんの写真集というか、彼を飼ってる著者の猫バカ日記。

どの写真もかわいくてとろけてしまう~~~。でもうちのやつのほうが可愛いもんねー、と思うのは猫を飼ってる人は皆思うのよね笑

青心社 2005

八二一 - hatch!―はっちゃん日記
八二一 – hatch!―はっちゃん日記

田口ランディ – モザイク

やっと読んだランディ氏のこの本。この人の文章は濃い。内容もそうだけれど、表現の質が濃い。スピードがめちゃくちゃ速い。とくにこの本では文章に切羽詰ったようなスピード感と質量が感じられる。一度読み出すと止まらない。

もちろんフィクションなわけだけれども、ほんとにフィクションなのか?と思ってしまうのはなぜ?”いかにもありそうな話”だからというわけではなく、それはランディ氏の中にあるリアルな話だからか?いま、もしかすると、渋谷で本当に起こってることなのかもしれないと思わせる、鬼気迫る気迫がこの本にはある。

世間でいわゆる精神病というレッテルを貼られている人たちへの理解と観察、そして描写がすごくおもしろく、感心させられた。常識(と経験)でしか人間はものを考えられないけれど、もしかすると、その常識とおもってる、それで構成されている世界というのは、単に全体の一部に過ぎず、それ以外の世界が常に平行に存在しているのに、いわゆる大多数の人々のための社会システムによって、それらが切り捨てられ、切り分けられ、理解されずにいる、というのが事実であるかもしれない、というのは、考えても考えても本当はどうかわからないが、否定できることでは決してない。そんなことを考えると不安でおかしくなってしまいそうだ。

幻冬舎 2003

田口ランディ - モザイク
田口ランディ – モザイク

江國香織 – ホリー・ガーデン

ひさびさにレビュー。江国さんの本はとにかく読むのに時間がかかってしまう。いや、難解だとか、やたら分厚いということではないのだけれど、前から思っているように、この人の文章はとっても行間が多くて、ひとつのシーンを読むのに想像力をフルに生かして(というと聞こえはいいが、たんにぼーっとイメージが沸くのを待ちながら)読むので、時間がかかってしまうのだな。他にもそういうひといる?

主に男女2組の恋愛模様+まわりの人、という構図で描かれる、なんでもない毎日の情景なのだけれど、もしかすると話がすーっと通らないのを好まない人には、この話はいーーっってなるかも。あまりにも何も起こらないし、ほとんど進展しないから。ありふれる日常。

でも、江国さんの文章はそのなかでのほんとこまやかな、コトバで表現するのがとっても難しい、ほんとちっさな感情や気持ち、様子などを、もっと違った直接的でない、狙ってもない、ちょっとした情景描写なんかを紡いで描くので、確かに「そうそう」と思えることばかりなのだけれど、それを読み取るのが難しいように思える。でもそういう表現方法がいちばんあってるよな、と読みながらに思う。

ゆっくり読む本だ。

新潮社 1998

江國香織 - ホリー・ガーデン
江國香織 – ホリー・ガーデン

望月諒子 – 殺人者

最近ミステリーばっかり読んるけれど、これはかなり面白いと思う。ミステリーというだけでなく、やるせないというか、犯人の背負ってきたものが直接的でなく、真相を明かされるとともに明らかになっていく点とか、幾重にも周到に用意された殺人劇の見事なつながりかたと、最終的に立証できないで終わってしまうという話の展開がとても面白い。結構枚数あるほうだと思うけれど、話が一直線でなく、いくつものショートストーリーをまとめて、ひとつ終わるところに次のストーリーのはじまりがあり、というような構成で、最後まで読んでしまう。

結構重たい気分になってしまうが、間違いなく面白いと思う。

集英社 2004

望月諒子 - 殺人者
望月諒子 – 殺人者

石田衣良 – 娼年

最初、高級売春クラブ(ただし女性向)が舞台のエロ小説かとおもった。でも実は全然違う。これは面白い。

筋はさておき、主人公はつまるところスカウトされて、高級娼夫となっていろんな女性と出会うのだけれど、まず感心したのはそのセックスの描写の巧さ、というか描き方で、完全にエロいのだけれど、いやらしくない。スポーツ新聞とかのああいう小説とは違うのね。ぎりぎりのところで品があるというか、とても現実的なリアルな描写なのに、グロかったり、エロすぎたりしない。あと、男性作家なのだけど、限りなく中性っぽい感じ、女性が書いたものとも多分違う。あくまで男の視点で描かれているからか。

主人公の目を通して、いろんな女性の欲望の形がでてくるのだけれど、それもまた「へー」と目からウロコなこともあったりして、なるほどーとおもったりして。奥深いというか、男って単純だなーとおもったりして。

なんだろ、知らないというか考えたことないことがたくさん描かれているので、すごく興味が湧いたというか、新しいチャンネルができたというか。うまく書けない。いうても大きなひとつの道だとおもって横をみたら、無数のたくさんの道があった、というような感じか?

書いててよくわかんなくなったけれど、とにかく面白くて一日で読んでしまった。でも電車で隣から覗かれたくはないな、恥ずかしいもん。

集英社 2004

石田衣良 - 娼年
石田衣良 – 娼年

沢木耕太郎 – 檀

作家・壇一雄氏の妻、ヨソ子夫人の視点から描いた壇一雄氏の生涯。沢木さんの作品らしく、夫人の一人称で徹底的に作者の感情を排した形で書かれている。ドキュメントでもなく、ルポタージュでもなく、小説でもなく。でも、読み手がヨソ子夫人本人またはすぐ横で話を聞いてる人になってしまえるぐらいの、自然でかつ深いその物語がぐんぐんせまってくる。一雄氏をしらなくても、名作といわれる「火宅の人」を読んでなくても、それに関係なく楽しめる作品。さすが沢木さん。

物語の内容はその「火宅の人」の裏側というか、実際の生活・人生としての一雄氏の姿を追っていくのだけれど、内容はおいておいて、一雄氏が他界する少し前からの描写(無論夫人が語った内容、口調で)が、ちょっと今のぼくには結構迫ってくるものがあって、読みながら、目を伏せそうだった。悲しいのじゃなくて、今までそんなことはまったく意識せずに生きてきたけれど、自分もそういう立場になる日もそう遠くないのかな?と最近実感するようなことが多いためなのだ。だからそういうシーン、実際にあったことこまかなことが生々しいというか、淡々としているけれど、スゴイ彩り・リアリティある、まるで映像が見えるかのような、そんなシーンは読んでつらかった。ちょっと震えそう。怖い。自分の畏れを外から突きつけられたようで、絶句してしまう。

ま、それはおいておいて(上のは物語上はほんの一部のことだから)、その生涯を追ったあとに、ヨリ子夫人がいろいろ振り返って思う、夫婦の形や愛、そういうものに思いを馳せる章は、時代や背景、作家という特別な人物、そういった要素を取り除いてみても、今の時代の人間にいろいろ諭し、考えさせてくれ内容だと思う。

さて、どう生きるか、か。
沢木耕太郎 - 檀

宮部みゆき – 魔術はささやく

これってだいぶ昔の本だったのねぇ。また古本で買ってきて読んだ。宮部みゆき読むのは初めてかな?

ミステリーだけれど、単純でなくて、この話は奇をてらわないように、うまくプロットされた別の物語、シーン、人物たちが、じんわりと結びついていって、どんどんタネが明かされていくのだけれど、いくつかの大きなテーマがあって、それがまた関連づいてるという、結構複雑な話なのに、あたまがこんがることもなく、すきっと読める、話も夢中になってしまえるぐらい面白い。

きっとすごい才能ある人なんやなーと勝手に想像。

人や社会にあるひずみや暗い部分をうまく拾い上げてるように思う。他の本も読んでみたいな。

新潮社 1993

宮部みゆき - 魔術はささやく
宮部みゆき – 魔術はささやく

田口ランディ – もう消費すら快楽じゃない彼女へ

またランディさんの本読んだ。この人の本はほんと面白いというか、ぐんぐん引き込まれてしまう。

3部構成になってる。1999年当時にあった(読んでてあーあーそういうのあった)事件とか、彼女の身の回りで起こったことへの素直な視点での感情が描かれている。まるで横でしゃべってるように。

この本の中に何度か出てくる彼女の大阪の友達のひとがすごい。そのコメントとかが。

うまくかけないけれど、なんだかこの本からたくさん触発されたよう。どうなるかな?

幻冬舎 2002

田口ランディ - もう消費すら快楽じゃない彼女へ
田口ランディ – もう消費すら快楽じゃない彼女へ

江國香織 – いくつもの週末

江國さんの結婚生活(というか夫との生活)をつづった短編集。感覚的にわかるところとピンとこないところがあるけれど、やはりこの人のモノを見たり感じたり、生きていく観点はすごく面白く、怖く、女性ならでは・・・という言葉では到底片付けられないものがある、ように思う。

解説でもあったけれど、とにかく「行間描写」がとてつもない(どの作品読んでも思う)。何気ない表現の合間合間に聞こえてくるため息とか、動作とか、文字にない世界がぐんぐん見えてくるあたりが。なので、この人の作品を読むのはとても時間がかかる、いちいち想像するから。

一度暮らしてみたらどんな感じに思うのか興味あるけれど、きっと無理かなぁ。タノシそうにも思うけれど。

集英社 2001

江國香織 - いくつもの週末
江國香織 – いくつもの週末