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伊坂幸太郎 – ジャイロスコープ

gyroscope

伊坂さんの短編集。デビュー15年を記念した文庫のオリジナルの短編集。あちこちに書いた短編を(でもそれらもなんだか関係ありそうな感じもしたり)あつめ、書き下ろしを一編。オムニバス映画を見ているようで、話ごとに状況やテイストが違っていて、面白く読めた。

とある知らない街で相談屋と名乗る男に声をかけられる「浜田青年ホントスカ」、謎の巨大生物が存在して街が破壊されたらしい「ギア」、どこか文学的な不思議な世界が描かれる「二月下旬から三月上旬」、後悔ばかりしてしまう男がバスジャックに出会う「if」、一年に一度その日のために全てを準備し注ぎ込むあの方達の会社があったら、、、「一人では無理がある」、丁寧にやれることをできるだけするがモットー「彗星さんたち」、そしてこれらの短編をつなげる受け皿として書き下ろされた「後ろの声がうるさい」。どれも素敵だな。

「一人では無理がある」は伊坂さんぽいなーと思う素敵なお話。「彗星さんたち」も好きだな。文章もだけれど描かれている新幹線の掃除する方々が素敵だなと。たまにでてくる、登場人物が読んだ本から引用する格言のようなもの(今回はパウエル長官の本ということだった)がいちいち「いいな」とか思えるところも(余談だけど、こういういの描かれると、その本読みたくなるのよねえ)。そして書き下ろし「後ろの声がうるさい」は短くてもほろりとするロマンチックな話だった。やっぱり伊坂さんいいな。

そして伊坂さん作品をいろいろ読んでて今更気づいたけど、本のタイトルって邦題(というのか?)と英語のタイトルついてるのね。ちなみにこのジャイロスコープは「a present」、なるほどなーという感じ。他のも見てみよう。英語の方が本のイメージわかりよいかも。だからどうだって話だけど^^;

新潮文庫 2015

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石田衣良 – カンタ

kanta

久しぶりに石田さん。あるとき小学生の耀司が団地に越してくる。そのとなりの部屋にいたのは、すこし変わった同い年の少年・カンタだった。耀司は容姿もよく、頭の回転もいい秀才。そしてカンタはいまでいうところの発達障害、興味あることはいつまででも続けられ、数字にはものすごく強い。そしてその二人を見守る美少女・姫菜。水商売の母をもつ耀司はやがてカンタの家に入り浸るようになり、兄弟のように育つ。しかしカンタの母はある日倒れ、やがてなくなってしまう。そのときカンタの母から耀司は「カンタを助けてやってくれ」と頼まれ、カンタは「いざというときは耀司を守りなさい」と約束させられる。

そのまま兄弟のように育つ二人。小中は同じだったが、高校になって別々になるが、カンタは耀司のところにもどってくる。ある事件から耀司は自分たちが自立して自由になるにはたくさんのお金が必要なのだと思いつく。やがて二人してバイトをして金をため、それを元に投資を始めすこしずつ金を殖やしていく。しかし耀司はそれでは満足しなかった。何か起業するのだ、その強い思いがある日まだだれも見つけていなかった金脈 – 新しい事業を思いつく。それはケータイのゲームサイトだった。。。。

ケータイのゲーム会社が大成功し、若くして時代の寵児になった二人だったが、時代の変わり目においてまだ誰も経験したことのないものを生み出したものは、古い世代から敵視されてしまう。世代交代を恐れる旧世代は、いままでの常識にとらわれない若者たちを蹴落とそうと、廃城しようと狙う。すこし様子は違うけれど、この辺りの物語の動きをみてて頭に浮かんだのはホリエモンこと堀江貴文氏だった。ほんと彼をモデルにしたんじゃないかなーと思うほど。でも本はだいぶ後に書かれてる。とおもってたら、解説はその堀江氏だった。おもしろいw

2人+1人の幼いときからつづく友情の物語、そして成長の物語として読んでもいいし、いわゆる成り上がり話としてもおもしろい。ほんといいなあと思うのは二人の友情が固く、ずっとつづいていくところ。それはカンタの母が亡くなるときに二人にしたお願いと約束だったこと。原点が団地っていうのも自分の昔に重なって懐かしい思いするところもあるのかな。

スーッと読める物語だった。石田さんにしてはあまり陰ないし、済ましてもなく、いい印象。

文春文庫 2014

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池井戸潤 – 銀行仕置人

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池井戸さんの銀行話の本もいくつか読んできたけれど、なかなか飽きさせないのはさすがだなあ。メガバンクという巨大で、一人の人間では動かしがたい大きな組織。渋っていたのに稟議を通してしまったばっかりにその結果焦げ付いた融資の責任を取らされた主人公・黒部。彼は「座敷牢」というところに追い込まれるが、そこで出会った人物に、このメガバンク内の不正を暴くという影の仕事が舞い込む。。。

表側から見ているとちっともわからない(あんまり用事ないし)銀行。株式もそうだけれど、お金のやりとり、とくに融資というのは、本来その会社なり組織に対して応援するものであったはずなのに、今やそれはたんなる投資、金が金を産むという形でしか成り立たないものになってしまっているように見える。そこに義もへったくれもない。そして、そんな巨額の金を動かす影に銀行と他との人間的な癒着があり、、、本当にこの池井戸さん描くような事件があるのかどうかわからないけれど。明るみにでないのも、こういう大きな組織ならではかもしれない。

銀行員といえ、金を扱っている以上、組織は揺るがなくとも、個人としては弱いもの。大きな陰謀に一銀行員がどう立ち向かっていくのか、、、ちょっとハリウッド映画のネタになりそうなお話。

双葉社文庫 2008

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田中啓文 – 落語少年サダキチ

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いつだったか田中さんが「落語少年の本だすで」と言っておられて、どんな本だろうと楽しみにしていたこの本。一応子供向けってことになっているけれど、落語(とそこに含まれる文化的なもの)の魅力を存分に伝えているという点では、大人が入門書(?)として読んでもいいんじゃないかと思う。実際これ読んだら落語を聞きたくなりました。とくにこの物語にキーとなっている「平林」というネタ、聴いたことないので。もちろん寄席で生で聞きたいです。

物語は小学生の主人公・忠志がひょんなことで出会って、一隻落語を聴かせてもらい、大笑いすることから落語に興味をもって、、、という話だけれど、やもすれば古臭い昔話でよくわからん、と言われがちなところを、この「平林」というどの時代で聞いても楽しめる仕掛けのある落語を題材にして、誰もが経験した小学校時代のあの懐かしい感じや、鍋奉行シリーズでもいつも感心する見事な時代考証(というかどこで調べてるんだろう)を伴って、落語の世界をうまくいまの話のように感じて面白く読めるようにつくってあって見事。桂九雀さんの面白い解説もあって、この本で確実にとくに子供の落語の裾野を広げたんじゃないかな。ほんと素晴らしいと思う。そう長くないお話なので(これも児童書ということを鑑みてだろう)すっと読めて楽しいです。落語に興味ある人ぜひ。

朝倉世界一さんの絵もロマンチック(という書き方おかしいかもだけど)でいいし(女の子の絵が好きなのです)、写植さん(っているの?)がいろいろ工夫しただろう字が飛んでる感じも楽しい。

そして主人公がどんどん田中さんに重なっていってしまう。田中さんこんな子供でこんな子供時代だったんじゃないかなあとか想像したり。田中さんはぼくの身の回りでは「サダキチ」と呼ばれてますからねw

福音館書店 2016

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田中啓文 – お奉行様の土俵入り(鍋奉行犯科帳5)

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鍋奉行シリーズの5冊目。たまたまいま読んだのだけれど、世間の話題は相撲に相撲。この作品のひとつめのお話は相撲のお話「餅屋問答」。江戸時代、相撲は大名の楽しみのひとつでもありお抱え力士がたくさんいたそう。タニマチが大名だったというわけね。それで権威を示すのに大名たちはこぞって強い力士を抱えたそう。ということは、古くは奉納されるものでもあった相撲に権力争いが持ち込まれるわけで、それに相撲部屋自体が翻弄されたりしたそう。ほんとよく時代考証してるなーとまたまた感心。一見ひ弱そうな関取とものすごく強い関取の一番は手に汗握る攻防で、いまの相撲見てるよりよっぽど面白い。

今作品は3編でこの「餅屋問答」、忠臣蔵の討った側/討たれた側の子孫がひょんなことで関わりになり大騒動を起こす「なんきん忠臣蔵」、そして前作にも登場した釣り名人の孫三平が鯉で儲けようとして騒動に巻き込まれる「鯉のゆくえ」。いずれも大坂の様子をよく知らせてくれて面白い。現在とは違うもっとほのぼのとしてでも勢いのある街の様子が伝わってきて、大坂ってええとこやなーと思ったり。いつかこれらの作品のいくつかを現在の場所で現代劇でやったらおもしろそうなのになーとか思う。ブラタモリとコラボしたりしたら面白そう、かな(?)^^;

お奉行さんの食いっぷりはほんと気持ちいいけれど、役者にやらせるとしたら誰だろうなー、とか配役想像するのもまた楽し。

集英社文庫 2015

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江國香織 – 犬とハモニカ

inutohamonika

江國さんの短編集。空港への到着からロビーまでの同乗者たちそれぞれから見た人生の一瞬のかさなり「犬とハモニカ」、素晴らしくうまくいっていた恋はずの恋人からの突然のわかれ「寝室」、愛しくてやまない男「おそ夏のゆうぐれ」、近しいのにどこか決定的にずれていて僕をみていないような気がする「ピクニック」、源氏物語の超意訳版「夕顔」、夏のバカンスに訪れるゲイのカップルとそのコテージや街での人間模様「アレンテージョ」

いつも江國さんの物語はその最初の一行から彼女の世界にすっと入るという感じじゃなくて、その空気感に掴まれて身動きできなくなって、そのまま物語の傍観者や登場人物にさせられてしまう力がある。そしてどんな爽やかさの中にもひそむ濃い湿度。それが魅力でもあり魔力でもあり、少し怖い。

とても非現実的な感じがするのに、でもそれらは普段のぼくたちのすぐ隣や自分自身に起ることのよう。だれもが持つ、どうしようもない感情、欲望、あきらめといったものが、濃くなったり薄くなったりしてぼくたちと包み込んでいる。そこらに垣間見えるその模様を織り取ったかのような江國さんの物語たちは、お話としてはときに楽しく、ときに悲しく、ときにへんてこに読ませてくれるけれど、どれもが気づいてない心の隙間に忍び入ってくる感じがして、それが怖くもあり気持ち良くもあり、とても不思議な体験をする。江國さんの物語を読んでいるときだけ、時間が遅く流れたり、ここではないどこかに行ってしまっている気がするのは、選ばれる言葉の魔力もあるけれど、そういった体験をするからだろうなと思う。

川端康成賞受賞作(2012)

新潮文庫 2015

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三浦しおん – 星間商事株式会社社史編纂室

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星間〜というタイトルをみて、三浦さんと宇宙の話か?なんだこりゃ、とか勝手な想像して手に取ったらある会社の社史編纂室とその人間模様のお話だった。これはこれで面白そう。一癖も二癖もある人間があつまる、車内では窓際扱いされている星間商事株式会社の社史編纂室。社長の鳴り物で社史をつくることになり組織されたが、いるのかいないのかわからない幽霊部長に、やる気あるのかどうかわからない遅刻常習犯の課長、女の子にしか興味のなさそうな先輩、ダイナイトボディの後輩、そんな彼らに囲まれた主人公・幸代は真面目一筋、でも彼女の趣味はBLの同人誌製作だった。

そんな彼らが遅々としながらも進める社史編纂。しかしそれを進めていくうちに、高度成長期のどさくさのころの会社の秘密・闇に気づく。難航する取材、どこからともなくやってくる横槍。そんなてんやわんやのなか、幸代は妙齢の同人誌仲間の離脱、同棲している不思議な彼とのいざこざなど彼女の人生にも風雲がやってくる。

三浦さんのお話にでてくる人間たちはどこか滑稽で、ダメ人間でも許せちゃったりする人もいれば、取りつくシマもないほど冷徹な人もでてきたり、でもみんな人間だな、って感じがする。人間くさいというか。どちらかというとそれなりにいい人というか。だから物語がシリアスになりすぎないような、そういうところが読んでいて心地いい。

この編纂室の奮闘と、社史がどうなったかという筋ももちろん面白いけど、この本で興味そそられるところは同人誌製作のほう。コミケに出店するやりかたやら、同人誌をつくるノウハウ、印刷のこと、中身のことなどなど、結構詳しく描かれていて(もちろん幸代が書いた文章も散りばめられてるし)、三浦さん詳しいんだなーと思ってたら、実は三浦さんその世界では右に出る物いないほどの婦女子だそう。へーー!知らなかった。いままで何冊か読んできてそんな風に感じたことなかったし。やおいに興味あるわけじゃないけど^^;

昔アニメや漫画が好きだったので、この感じちょっとわかるんだなあ。オタクという言葉もまだなかった頃もそういう趣味のひとはたくさんいて、共通するある”匂い”みたいなんがあったんだよなあ。雰囲気というか。ぼくもその一人だったはず。だからこのコミケの雰囲気とか(実際行ったことはないけど^^;)、同じ趣味の人が集まった時の感じとか、なんかよくわかって、うんうんと思ってしまったり。懐かしいな。

まあ、そういうのも、編纂室の面々の活躍も含めて、面白いお話だった。ほのぼの。

ちくま文庫 2014

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結城昌治 – 白昼堂々

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初めて手に取った結城さん。もちろん知らない作家さんだったのだが、別で読んでる(まだ読み終えてない)伊坂さんの本で紹介されていた(伊坂さんが好きって書いてた)ので、伊坂さんに興味ありありなので、いったいどんな本が面白いとおもうんだろうと思って手に取ってみた。

時は唱和40年代ごろ、高度成長期に入った時代。エネルギーも石炭から石油へのような時代。炭鉱であぶれてしまったものたちがスリを生業に細々と凌いでいたのだが、昔の仲間にそそのかされて窃盗団を結成し、全国各地のデパートに出没し店頭から組織的に物を盗んでいくという話。お話はその窃盗団のやりくちと、それを追う刑事たちのいたちごっこ。テンポは遅いけれど、なんだか憎めない感じの窃盗団(メンバーが個性的で名前も過去もおもしろい)とすこし抜けた感じの刑事たち(本人たちはいたって真剣)の丁々発止がとても楽しい。微笑ましいって感じかも。前途洋々だった窃盗団もやがてそのやり口がばれて、ちょいちょい捕まる仲間の失敗もあったりして、形成は不利になっていく。そこで最後に大私語ををして、、、と大きな窃盗を計画するが、それはいかにいかに。。。。

なんかのんびりしたハリウッド映画を見てるみたいな感じ。それは結城さんの筆によるところが大きいだろうけれど、描かれる時代もいまよりはずいぶんのんびりしてたというのもあるかな。ちょっと前に読んだ宮部さんの闇語りシリーズの中でもそういうスリや盗人の逸話あったのでちょっとそれも思い出したり。あれは明治の話だったけど。なんせ現代社会のようにギチギチしてなくて、おおらかで、悪人も憎みきれないし、お上もすこし頭がやわらかい。

憎めない人たちがいっぱいでてきたり、シリアスなシーンにもユーモアあったり、なるほど伊坂さんこういうの好きそうだなあとか思ったり。おもしろかった。

光文社文庫 2008

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朱川湊人 – かたみ歌

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はじめて読む朱川さん。本屋さんの棚で表紙の絵のなんともいえないレトロというか懐かしい感じに魅せられて手に取った。

昭和40年代半ばの東京の、都心からそう遠くない下町にある、アカシア商店街という古びた商店街ととその周りの街で起こる、少し不思議な話たち。古本屋、レコード屋、スナックなどが立ち並び、ザ・タイガースなどが流れる、昔はもう少し賑わった商店街。その商店街の横にある覚智寺というお寺はあの世とつながっているという噂があるという。

新しく街に引っ越してきた夫婦、漫画家になる夢をみて上京してきた若者、ジュリーに憧れる女の子、兄が失踪した小さな弟、、、いろんな人がいるそんな街で不思議なことが起こる。柱の陰に物言いたげな男の陰が見える男、死んだはずの旦那が帰ってきたと喜ぶ女、見知らぬ人と文通する女の子、人の死が色となって見えるようになった男、、、この世のものではないものとどこかでつながってしまった人たちの、少し怖くも、でもなぜか心が締め付けられそうになる切ないお話が7編。こういう懐かしい感じがする話には無条件に反応してしまうが、それだけでなくて、会えなくなった人、なくなったものなど、誰もが歳を経ると感じずに入れない寂しさや郷愁がさらりとはいってて、読んでいてほっこりしたり、切なくなったり。

猫が好きだからってのもあるけど、「ひかり猫」という話が好きかな。そして「枯れ葉の天使」も。一話一話は別の話だけれど、狂言回しのようにどの話にもでてくる気難しそうな古本屋の店主の姿が全編を通して少しずつ明かされていくのがまたいい。

短い作品だけれど、すごくよかった。朱川さんの他の作品も読んでみたい。

2008 新潮文庫

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池井戸潤 – シャイロックの子供たち

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東京の下町のある銀行支店のなかで起こるいろいろな事件。それはそのまま支店内部の人間模様、そしてその銀行そのものの組織の闇に繋がっている。 10編の短編で構成されてて、主人公が変わっていくのだが、どれも同じ支店内の人間。バラバラの人間模様かと思えば、それらが最後にまとまっていくのが面白い。

ある日起こった現金喪失事件。その犯人と目されたのは若い女性行員だった。しかし 時を同じくして別の男性行員が失踪。若手ナンバーワンと自他共に認める行員のおかしな成績、社内恋愛のもつれ、上層部の軋轢、、、、表からは見えない銀行の裏側の人間関係とそれを引き起こすゆがんだ体質、銀行そのもののおかしさが浮き彫りになる。

整然と冷静に、効率よく、数字がすべてできっちり動いているように見える銀行も、それらはすべて結局人間が動かしている。とするとそこには数字にはでない人間模様が。実際池井戸さんが描くような内実はどこにもあるようなものなのか、それとも突飛なものなのかわからないけれど、銀行という立場や組織が特殊であるのはなんとなくわかる。そして怖い。金と成績がすべて、というような世界には生きたくない。でもそうではなくて社会的意義に燃える人もいるのだろう。いろんな人がいて、そして彼らには家族がある。この物語では個人個人に焦点を当てながらかれらの家族とのことも描かれる。なぜ銀行で働くのか、どうしてそんなことになってしまったのか。

シャイロッックというのは、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」に登場する悪辣、非道、 強欲な金貸しで、そこから転じてそういう人物をシャイロックと呼ぶそう。

2006 文集文庫

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