ヒトラーの贋札

第二次世界大戦中、ドイツの捕虜としてつかまったユダヤ人たちのうち、印刷技術をもったものたちが、収容所内での少しましな待遇をうけられるかわりに贋札つくりをさせられるお話。

ドイツ映画だからなのか、華美なことがなく、淡々と物語が進み、少し全体的にセピア色がかった映像がその単調さに拍車をかけるが、それがゆえに、物語の本質やら登場人物たちの心理がより浮きだってみえるような作品だった。

本 当の話なのかどうか知らないのだけれど、生きるために自分の本意と違う事を(自分の信念に反する事を)するというのは、外様な意見としてはどうしてなんだ ろ?そんなことしなくていいのに、なんて思ってしまいがちだけれど、究極な状態ではなんでもありになってしまいそうな気がする。それでも自分の意志を貫こ うとするものもあれば、みんなのためにあえて嫌な事を進んでする、そういう者もいる。

どちらがよくてどちらが悪いという次元の話ではな く、よく考えても結論なんてだせない話だけれど、もし現実にそんな状態になってしまったら、時間だけは過ぎ去ってしまうから、結局何かを選択せざるを得な くなるのだろう。そんなとき、自分がどういう風に生きていくのか、そんなことを考えさせられた。

でも、そのあと、一体どんな気持ちになるのか、想像すらできない。

ヒトラーの贋札
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崖の上のポニョ

いろいろ大人からあーだこーだいわれているそうだけど、やっぱり宮崎監督はすばらしいとおもう。

やっぱり映画、とくにアニメーションには 夢がないと、そして無条件に無垢な心で楽しめないと、と伝えたいのかな?と思わせる作品だった。大人な目でみてしまったり、ストーリーやらリアルなことな んか考えてしまうと、いろいろ突っ込みどころ満載だけれど、子供のときのように目の前に現れるものをそのまま素直に受け入れていけば、そのまま楽しめる、 そんな映画だった。ストーリーに理由なんていらないもん。

いつの間にか忘れてしまってる子供のときにあったはずの感受性とか、素直な心と か、ちっさな夢とか、あったらいいなーとおもうこととか、絵本のなかの世界とか、子供にだけ見える空想の世界とか。つじつまはあってなくても理由もなくて も、ただそこにあるだけでうれしいようなものや世界。そんなものをみんな持ってたんだよー、てことを思い出さそうとしてくれたのか。単に宮崎監督のあこが れなのか。でもそれもどうでもいい。じんわりできたから。

あとすごく「そうよね!」と思ったのが、 最後のロールのときに、普通なら声優、監督、作画、アニメーション作成なんて、いろいろ役割毎に関係者名が列記されるところを、 ぜんぶ一緒くたにして「この映画をつくったひとたち」ってひとくくりにしていたこと。そう!みんな同じ気持ちでつくったんだよー、ってのがひしひし伝わっ てきて、すごく感動した。

そんなことをやってくれる宮崎監督。もっとたくさん映画と夢を見せてほしい!

崖の上のポニョ
崖の上のポニョ

ブレイブ ワン

恋人と散歩中に突然なんのいわれもなく恋人を殺害され、自分自身も重傷を負い、トラウマにおびえ、心に復讐を誓う女性の話。

日本でも最近「誰でもいいから殺したかった」という無差別殺人事件が頻繁におこるようになってきてしまったが、勝手なイメージだとたぶんアメリカとかの方がもっとひどいんだろうな。殺したいと思って殺す病的な殺人から、ゲームのような殺人まで。この映画では後者か。

し かし救いようのない展開が続くので結構ダメージをくらう。自分の中の別の自分が「制裁者」として動き、社会的悪を裁く、なんて字で書いたらかっこいいけれ ど、実際はめちゃくちゃなこと。しかし自分がその立場にたってしまったらどう考えるか、ってのは想像できない。だから少しはわかる気がするけれど、やっぱ りできないと思うな。いまの司法でもこの辺りの裁きはとても難しいだろうな。だから裁判員制度、どうなるのやら。正直あたりたくない。

最後はやっぱりアメリカ映画のええ話ぽい終わり方で、ちょっと全体とアンバランスやないんかなぁ?

ブレイブ ワン
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インディ・ジョーンズ クリスタル・スカルの王国

よーやく見てきました、というか、見てしまった♪

前作の「最後の聖戦」が1989年公開で、そのとき劇場に観に行ってからということだから、19年ぶり?そんなに経つのかー、と映画を見る前からいろんな思いが錯綜。

ま だ公開中だから内容は特に触れないとして、やっぱりハリソン・フォードはこの役がとても似合うと思うし、少し抜けてたり、逆にウィットに富んでいたり、女 に弱いが力は滅法強い、みたいな、漫画のヒーローのようなそんなキャラを演じるのが上手いと思う。こういう映画にありがちなやたらとキャラの立った仲間と か敵とかメカとか、そんなんなくても、画面の中でインディが上へ下へと縦横無尽に活躍するのは、ほんと映画の一番いい醍醐味を味わせてくれると思う。

ちゃ んと映画の中でも時間が立っていて50年代のアメリカからはじまる。ハリソン・フォード演じるインディ・ジョーンズも年をとっているし、父や友人が亡く なってるという設定になってるし、最初のシーンで倉庫のどたばたの最後にちらりと見える箱のなかみが1作目のアークだったりしたり(笑)、何度もみたら もっと面白そうなところ探せそうなのも、こういうシリーズ物の醍醐味か。

やはり時代の流れか、CGを使うシーンが以前より格段に増えて いる。それは実写ではなかなか演出できないようなことを可能にするけれども、やはりリアルなものをつかって工夫して撮影されたもののような、生の感じ、 チープなものにこそある深み、立体感、そんなものがかけてしまって、やもすれば主人公より目立ってしまってしまうのが少し残念。

でも、やっぱりインディ。わくわくするような世界の秘密やら、秘境やら、謎。そんなものが封じ込められたこの映画、やっぱり見ないと夏ははじまらないと思うなー。

単純に楽しめた、面白かった!

フライボーイズ

実話に基づいたお話。第一次世界大戦時にフランス空軍に参加するべく集まったアメリカの若者たちが、フランスに渡って飛行技術を学び、飛行機に乗り、ドイツ空軍と戦うお話。

第 二次世界大戦とちがって、なんだか複葉機とかはのんびり感があって、戦争ものであっても、少し悲壮感がないのは気のせいかな?でも、もしこの映画のなかの エピソードたちが実話に近いのであれば、この時代の闘いは、武士道精神ぽいところがあっていい時代だったのかもと思わせられる。いまのような大量発射大量 破壊みたいなものではなくて、一対一で正々堂々と戦うとこなんぞ、中世の騎士のよう。

ま、ストーリーは単純だったけれど、なによりも、フランスの大地のうつくしさには目をうばわれる。原野、森、草原、そして川、その色彩の豊かさ、そしてそれを繊細に映し出した画面、それに浮かぶ、なんだか少しのんびりした複葉機たち、そんな画面がすばらしく美しい。

フライボーイズ
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ヘアスプレー

楽しい映画。ふつーならどう転んでも人前に立つような仕事(ダンスの)につけなさそーな女の子が、持ち前のバイタリティーと夢とダンスのパワーでステージに登るおはなし。

ちょ いとミュージカル調で、ノリとテンポがよくて見やすいけれど、逆にいうとそれだけかもーという感じで、実は60年代初頭当時の人種差別問題やらもでてくる のだが、それはオマケで、とにかく楽しいだけー。でももしかしたらもう少し内容というか、テーマというか、焦点がはっきりしていた方がうれしかったかも。 でも昔々の白黒映画の白人娯楽映画はこんなだったのかもな。でもそれにしても、ちょっと薄いかなー。残念。

特筆すべきは主人公の母親役の人物で、最初からなーーんか違和感あるなー、スティーブン・タイラーじゃないよなー、とか思ってたら、思いっきり特殊メイクしてるジョン・トラボルタだった(笑)、これだけは見物だ!

ヘアスプレー
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マイティ・ハート

近年の911からの流れでつづくテロ(といっても、どれがテロなんだか、実際はわからないけれど)。それらを追うジャーナリスト夫婦。ある日、その夫があ る高位の指導者へのインタビューを行える事になり、約束の場所へ出て行ったきり、連絡がつかなくなる。必死に捜索するが、なかなか手がかりはない。そのう ち実はこれはインタビューというものを餌にした拉致ではないか?という可能性が出て・・・・となかなか複雑なストーリー。実話だそう。

ア メリカ映画だったから、またアメリカ寄りなストーリーかと思ったら、そうではなく、わりと中立(?)な立場から描かれてるように見えた。どうしてもこうい う映画をみると、このへんてこな副題のような、愛だとか絆とか、そんなことよりも、政治的な、宗教的な、もっと裏のドロドロした本当の世界のこと、なんか を想像して見てしまう。

しかし、アンジェリーナ・ジョリーのかなり素な演技がとてもよかった。夫を探し、心配する身重の妻、ジャーナリ ストとしての人間性、高度な政治取引の世界になってもたじろがない強い女性。そんな像がとても彼女に似合っていた。また映画全体が妙に盛り上げたりしない のがよく、事件の緊迫感、重さ、その裏にひそむ物事なんかがより浮きだってたと思う。

しかしこういう事件になったときの、外国の警察やら特殊部隊やらの行動力と行使力はすごいな。日本こんなんでけへんもんな。

人の命を取引につかうのは許されない。でもそういう手段をとらざるを得ないような所にまで追い込まれるイスラム圏とアメリカのひずみ、もっと解決する方法はいま採られている方法とは全然違うとこにあるとおもう。

マイティ・ハート/愛と絆
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永遠のマリア・カラス

稀代のオペラ歌手、マリア・カラス。この映画はフィクションだが、彼女ととても親交のあった映画監督がとった作品だそう。だから、この映画には彼女への愛があふれている。

物語としてはどうしたこともないのだが、声をわるくして、引退のような生活をしている彼女に、さる音楽プロデューサーがカムバックを薦める、というおはなし。結局カムバックはしないのだけれど。

それでも隠遁生活をしていた彼女がふと街角にあらわれたときに、パリ市民たちが示す反応とか、彼女のひとことひとことに騒動が巻き起こる様とか、どれくらいのスターだったのか、というのが、彼女を全く知らない人にもよくわかる。

本 編中にながれる(それが物語上でプロデューサーが仕立てる作品なのだが)、本物の彼女の歌声をつかい、それにミュージカル仕立ての映像をつけた作品(これ が見事に役者が合わせきっている)が素晴らしい。というか、やっぱり歌がものすごい。カルメンとか椿姫とかとか。オペラには全然なじみがないけれど、その 神が宿ったかとおもえるような歌声に打ちのめされてしまう。

ピアフが人生の喜怒哀楽を歌ったのならば、彼女は神の言葉を歌ったのかも。どちらもすばらしい。

永遠のマリア・カラス
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エディット・ピアフ~愛の讃歌~

最近のこういう音楽家の半生とかを描いた作品ってのは、ほんと役者さんの徹底さがすばらしい。この映画でピアフ(これって芸名だったのか)役を演じたマリ オン・コティヤールがすばらしかった。なんであんなにできるんやろ。改めて国外の俳優さんたちの層の厚さを感じずにはいられない(って、単にモノ知らずな だけなんだが)歌も歌っているのかー。やっぱすごい。

戦争に翻弄された不幸な生い立ちからか、はちゃめちゃな清秋時代、そしてちいさな チャンスをつかんで大きく成長していく姿は、ひたすらへーっっと思ってしまうのだが、やっぱり才能あるひとというのは、努力ももちろんするのだろうけれ ど、頭角をあらわすべくしてあらわすんだろな。

全編をいろどるピアフの歌、その歌声の素晴らしさ、というか、すさまじさにほかのすべて が消し飛んでしまいそう。この人が歌うシャンソンってこんなんだったのか。内容とかも全く知らずぺらぺらした雰囲気ばかりが伝わってしまうものが多い中、 本当にシャンソンというものがこういうものだったのよ、ということを思い出させてくれただけでうれしい。

しかし筋の方が時間の制約か、 結構人生を描いて行くこと、恋人との日々、そして不幸な別れを描くのに精一杯で、もっと人生の深い、ピアフの内面を描くに至ってなかったような気がするの が残念。もっと一部分だけ切り取ってでも、このピアフのすごさを伝えられたんじゃないかと。

「愛の讃歌」ほんとはこんな歌だったのね。

エディット・ピアフ~愛の讃歌~
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恋とスフレと娘とわたし

もともとのタイトル「Because I said so」は、主人公のひとり、ダイアン・キートン演じる母親の口癖。なにかにつけて3人の娘の行動に口出ししたがる、ちょーーとイタささえはいった母親が、 その娘の一人といさかいを起こしたり、仲良くなったり、なんだかんだとドタバタを繰り替えすうちに、親子(母子)とは、恋とは、愛とは、親離れ子離れと は、なんてことを知っていくストーリー。

ダイアン・キートンがほんと困ったチャンな母親なのだが、絶妙なセンスの服装がなんとも。演技 も楽しいし、見ていて楽しい、微笑ましい。やもすればうざったい内容になってしまいそうなおはなしだけれど、チャーミングな女性4人が画面をところせまし と走り回るので、にこにこ見てられる。

ちゅうか、母娘ってこんな似るもんですかねぇ。
なんか、ぼーっと見れる映画だった。

恋とスフレと娘とわたし
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