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石田衣良

石田衣良 – 赤・黒(池袋ウエストゲートパーク外伝)

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久しぶりに読んだ石田さん。もうだいぶ前に読んだからうろ覚えなんだけど、備忘録的に。

IWGPシリーズの外伝。今回は真島くんはでてこない。映像ディレクターを生業とする小峰が飛びついたやたらと率のいいバイトはカジノの売上金の強奪だった。その強奪は難なく成功するのだが、その仲間の一人に裏切りがでて金は奪われるわ、発注主は死ぬわ、自分はカジノの元締めに引っ張って行かれるわと散々な目にあい。金を取り戻せなければもう二度と表の世界に戻れない事態に。顔もよくわからないその裏切った仲間を探す。それを手伝うのはカジノの元締めの組にいた通称サル。このコンビはなんとかやつを捕まえることができるのか?そして彼らは博打を博打で返す手にでる。。。

いつも真島くんに隠れて目立つことが少ないけれど、このサルもだいぶいいやつだなあと思う。人情あるというか。たまに足を踏み入れる池袋のこの西にある広場に彼らがいないかなといつも思ったりするけど、ここまでかっこいいやつはなかなかいないなあ。

相変わらず石田さんのこの一連のシリーズはクールな感じ。でもいまはちょっと前の感じもするけれど。いまはどこも外国人だらけになってしまった。

文集文庫 2006

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石田衣良 – 波の上の魔術師


大学は卒業したものの就職浪人して毎日パチンコでぶらぶらする男・白戸の前に、ある日老人が現れてパートナーにならないかという。やくざ者ともかかわりを持っているような雰囲気のある老人だったが、その元を訪れてみると、老人はディーラーだった。老人から株のディールについて教わる白戸。はじめは何も分からなかったのだが、そのうち数字が踊り、その波が見え感じられるようになっていく・・・

僕はいわゆる金で金を生むような行為は好きじゃない。やっぱり労働の対価としてあってほしいものだし、金が金を生んでいる場所にはリアルはものは存在しない、全部データだけ。そういう世界はありだけれど、自分はリアルに感じられるものを触っていたいと思う。そんなだけれど、まったく知らない世界の話、そしてきっと簡単ではないけれど、一部の才能と勇気がある人間になら乗りこなせる世界がいくつかあって、そのひとつはこの株の世界なんだろうと思う。

何も知らなかった白戸がどんどん株の勘を会得し、老人の目的を知るようになっていくに従ってストーリーもスピードアップしていき話にどっぷりはまってしまった。単なる金儲けの話じゃなくて、バブル崩壊後の日本経済の悪化とそのときの国策や銀行や保険会社の行動、世界経済について社会的な指摘も交えながらの話の構成は見事。結局銀行や保険屋の食い物にされたのは子供のためになどなど小さな幸福を望んだ高齢者ばかりだった。犯罪かそうではないのか?事実にそっているだけにすごくリアルさがあって面白かった。そして単純なハッピーもしくはアンハッピーエンドではなく、ちょっとした仕掛けもあっていい感じ。さすが石田さん。そしてこんな世界の話なのにどこか青春小説ぽいところがまたいい。

文集文庫 2003

石田衣良- 東京DOLL


小さいながらもミリオンヒットを飛ばすゲーム会社の柱となる天才クリエーターMG(=Master Of Game)。彼が新作ゲームの構想を練っているときに、出会った天使の羽を持つ少女ヨリ。ゲームのイメージを具現化するモデルとして彼女を雇うMGだったが、ファインダー越しに覗く彼女の姿を見ているうちに彼女に惹かれていく。すごく成功していても何か満たされない男、そして小さな夢をもって生きる魅力ある少女。モデルとして完璧な彼女は「人形にしてよ」という。そして「人形は思いっきりもてあそばなくちゃいけないのよ」と言う。孤独なMGの心をヨリは癒していく。しかし彼女の不思議な能力により、この先にゲーム会社にもMGにもそしてまわりの人間にも不幸が訪れることが予知され・・・・

東京を舞台にした、都会の冷たさとバーチャル世界の深さ、そこからかけはなれて存在する人肌の温もり。相変わらず石田さんの描く世界はかっこよくて、クールで怖い。成功とは都会のビルの陰のように孤独なものなのか。文章自体もあまり温かみなく、冷淡というほどのトーンで描く感じがいいな。なのでより一層ヨリが際立って、色彩強く見えてくる。

物語自体はそうややこしくもなく、ほほえましくもなく、だけれど、スピード感もって読めていいな。もっと結末はややこしくなるかなーと思ったけれど、そうはしなかったか、ふーん、という感じ。

講談社文庫 2007

石田衣良 – ドラゴン・ティアーズ-龍涙(池袋ウエストゲートパーク IX)


もうこのシリーズも9作目。すごいなぁ。相変わらず時事ネタをうまく取り入れて作品に生かしている。今回はリーマンショックなどの経済不況が原因のひとつとなった貧困、社会の底辺のまだ下の世界のお話が4つ。

テレビで流行り華やかなエステの世界の裏の顔を描く「キャッチャー・オン・ザ・目白通り」、街の片隅をねぐらにしている底辺労働者の実態「家なき者のパレード」、借金が生む悲劇「出会い系サンタクロース」、じわりじわりと広がる中国系社会の表と裏「ドラゴン・ティアーズ – 龍涙」、どれも実際にある話(だろうな)で、大きな視野から描かれがちだけれど、石田さんはあくまでマコトの目と耳、そして池袋という街を通して語る。だから目線が低い。なので大きすぎて実感できない社会の波が、実感できる大きさの出来事として入ってくる。

実際コンビニや最近はやりの安売り店、百均ショップなどなどモノやサービスそんなものたちがどんどんどんどん安くなっていっている。表面的にはうれしい話のように思えるが、ちょっと考えたら恐ろしい話じゃないだろうか?たとえば300円を切るような値段でつくられるお弁当。どう考えても自分じゃ作れない。たくさんつくって販売したっていったいどこに利益が?と思ってしまう。食べ物だけじゃない、さまざまなモノが(きっとどこかで誰かが作ったはず)安くなってる。ということは原価が異常に安いということだ。以前は”安かろう悪かろう”といって安さは品質の悪さ、というのが当たり前な考え方だったが、いまは悪くないものでもなんでも安い、安すぎる。サービスや労働についても同じだ。

ということは僕たちが想像する以上に社会には底辺のさらに下に底辺があり、そこでまたうごめく人々がいるということ。そんな人たちの上にぼくたちは暮らしているが、彼らの姿はまったく見えない。実際にいるはずなのに。そしてそこに巣食う魔物たち。それらも含めてぼくたちは立っている。そんなことを無視していたわけでも忘れていたわけでもなく、知らずにいままですごしてきていた。いや、考えたり知ろうとすればわかることだったのかもしれないが、それを怠ってきたのかもしれない。

安ければいい、楽だったらいい、それは魅力的な言葉だけれど、なにか形や得るものがあるのならば、それを生み出したひとがいる、ということを考え、それを通して透けて見える、そばにあるのに知らない世界のことをもっと考えたほうがいいんだろうな。

文集文庫 2011

石田衣良 – 夜の桃


石田さんでタイトルが「夜の桃」ってきたら男女の物語だろうなーと思って読んだらまさにその通りだった。40代半ば、仕事にも成功し、円満な家庭を持ち、魅力的な愛人まで持つ男 雅人。そして同じように成功している男3人と作った自分たちの遊び場所であるBar “Eat The Peach”。日々仕事、酒、女・・・たくさんの快楽に溺れる彼はこのまま人生の最もよき時を過ごしていくかに思えたが、あるとき出会ったまだうら若い少女のような女に、いけないと思いつつも恋をしてしまったとき、すべてが瓦解してゆく・・・。

いやらしいです(笑)電車の中で読んでいて横の人に覗かれたらきっと「エロ小説読んでるぞ、こいつ」と思われてしまそうなほど濃密な描写に溢れまくってて、ちょっと困るほど。しかし出てくる女性がどのひとも魅力的なのでぐぐぐと引き込まれてしまう。困った困った。

そういう描写をのぞけば、結構男性の生態については鋭い着眼をしていると思う。男なら誰でもこんな風に考えてるんじゃないかなと思える台詞もちらちら。結局は男という生き物はいろいろ獲得していくことに満足感を覚え、つぎつぎと新しい玩具をほしがるけれど、結局それらはすべて所詮玩具/幻想であって、ほんとうに自分本来の姿でいられるのは裸で女性といるときかもしれない。

あまりにも物語のテンポがよくて描写もこんなのだし(笑)、出てくる人物も魅力的なのですすすすーと読んでしまうのだが、こういう派手なストーリーに隠れて結構大事なことが描かれてるように思う。たしかにいまはバブルのころと比べたらなんでも小さく小さく我慢我慢な風潮になってしまっていて、男や女という生物自体の元気さ放埓さすなわち欲望の深さも削がれてしまっているよう。人間だって服を脱いで化粧を落としてしまえばただの動物。本来もつ動物的な部分まで矮小になってしまったら、それこそ種の危機なのかも(大げさかな)。石田さんはそんな弱りきった男性にエール、いや叱咤激励をしたいのかもな、と思ったり。

新潮文庫 2010

石田衣良 – 非正規レジスタンス(池袋ウエストゲートパークVIII)


久しぶりにIWGP。今回もマコトがカッコいい。

いままでのものよりだいぶ話が軽め、というか、アンダーグラウンドな感じがしない。さらっとした感じ。もしかしてこのところ重たい本ばかり読んでいたからか?マコトを通して語る石田さんの口調がいい意味で軽くて心地よい。

シングルマザーの弱みを描いた「千川フォールアウト・マザー」、ごみ拾いがクール「池袋クリンナップス」、父娘のすれちがい「定年ブルドッグ」、フリーターの現実「非正規レジスタンス」の4短編。表題の「非正規レジスタンス」以外はかなり軽い。ちょっとモノ足らずな感じもするなあ。サルやタカシがあんまり活躍しないからかな?

でも「非正規レジスタンス」(非正規でレジスタンスて面白い言葉の組み合わせよね)はなかなか考えさせられる話だ。現実に池袋だけではなくちょっとした大きな街だったらどこでも今や見かけるようになった話。ちゃんと綺麗にはしているがいつも大きなバッグやキャリーバックをもつ若者たち。一見普通の若者と同じだが、もしかするとかなりの数の住所不定フリーターが混ざっている。彼らは日雇いのアルバイトでしのぎ、ネットカフェなどに生息する。一度このスパイラルに落ちるとほぼ浮上できない。でも彼らは自己責任という名のもとに大きな声で不平も言わず、静かに生きている。帰ることのできる家のある者とそうでないものの差はいったい何か?個を無視して労働力とその対価を交換するだけの社会に未来はあるのか?

そんな問題提起をするこの作品。40代以下の人間なら誰もがすこし思い当たることがあるのではないだろうか?人と人との繋がりでさえ国や自治体から場を提供されないと生まれにくくなっているいまの社会。いざというときに引っかかるべきセーフティネットは本当にあるのか?機能するのか?砂粒が手のひらからこぼれていくように、我々もどこかに流されていってしまうのではという不安しかのこらない今。結局それらを変化させるのは自分たちでしかないのだろう。

文集文庫 2010

石田衣良 – REVERSE


ネットを介して出会った男女・・・それでは今では珍しくもない話だけれど、彼らはお互いに性を偽っていた、つまり男は女性になりすまし、女は男性を装い・・・・、しかしこの2人はお互いにネットの中で信頼関係を築き、徐々に必要不可欠な相手となっていく。時がたち、2人はついに「会って直接話してみたい」という欲求を我慢できなくなり・・・・

設定だけでもなるほど石田さんうまいとこ突いてくるなぁと感心したのだけれど、描き方も主人公である2人を短いスパンで切り替え続けるというのが、ネットのチャットのようだし、それにより時間の経過を同時進行で無理なく描くということに成功していてすごいなーと思う。ネットが必需品な人間にはよくわかるネットをやってる人が感じる感覚、バーチャルな世界だからこそリアルな気持ちが素直にでる感じ、メールというある意味手紙と話す言葉の両方の特徴と短所を持つ道具、そんなものを説明なくうまく伝わるように描いている。

この本を読んで、なぜネットだとリアルの人間関係とは違う関係が生まれるのか、ネットおかまやネットおなべになりすましたくなる感覚、そんなものがわかったような気がした。石田さんも描きたかったはこういうことじゃないのかな、人間のコミニュケーションというのは一体どうやって成り立っているのか?

ネットだと出会いには姿形はない。つまり視覚による先入観がない。どんな人間でも出会いは均等に平等であり、だからこそ端末の前にいる人間の中身の部分同士が直接ふれあうことができる。性や年齢を変えて自分から遠い存在になればなるほど、リアル世界での自分とは無関係になり、その分その存在に自分が本当に語りたいことを語らせることができるのではないだろうか。

しかしネットでいい関係を築けたとしても、それがそのままリアル世界に延長されるとは限らない。リアル世界には姿形があり、社会システムがあり、人々は均等でも平等でもないからだ。

果たしてネットで出会い、お互いに性を偽る、しかしお互いに必要だと感じている2人はどう出会い、ネットでの関係をリアルの世界に持ち出せるのか?実際今どこかでおこっているかもしれない物語。まあちょっと出てくる人物たちがみんなかっこ良すぎる気もしなくはないがー、主人公の男を除いて(笑)

中公文庫 2010

石田衣良 – Gボーイズ冬戦争―池袋ウエストゲートパーク7


IWGP7作目。今回も小気味いいテンポで読ませてもらった。相変わらず旬のネタをうまくつかって、でもそのネタではなく、登場人物たちの人間像を描いていておもしろい。

今回は表題にもなってる「Gボーイズ冬戦争」でのマコトとタカシの堅い友情というか信頼しあっている様子が、なんかある意味クサいけれども、そこがよかった。やっぱりマコトはかっこいいなーとおもうし、タカシやサルといったいい仲間をもっててうらやましいなーと思う。いいなぁ。

あと毎回おもうけれど、マコトがお店で聴く音楽、どれも魅力的なのよね。どんな音楽かしりたくなるし、そう思えるような挿入のされかたがまたたまんない。石田さん音楽のセンスもいいよなぁ。

文春文庫 2009

石田衣良 – 40―翼ふたたび


活字たちが熱をもって心にダイレクトに飛んでくるよう。

いまアラフォーと呼ばれている世代にはぜひとも読んでもらいたい作品。買って配りたくなるほどすばらしい。めったにないことなのに電車で思わず泣いてしまった。ストーリーのよさ・うまさもあるけれど、主人公たちの気持ちがダイレクトに理性をつきぬけて伝わってくる。まさにアラフォーの、諦めとほんの少しの期待をないまぜにした気持ちが押し寄せてくる。物語が物語でなく、まるで自分のすぐとなりの物事のように感じられる。

きっと10代は10代なりに、20代は20代なりに・・・みんなその年代ごとに変化があって、悩んだり喜んだり、人生につまづいたり、いろんなことがあって嫌でも大人になっていったり、そっから逸脱したり、復帰したりといろいろあるはず。この本はいろいろあってついに40になった人たちが主人公。その「人生の半分がおわってしまった。しかもいいほうの・・・」と思っている(たぶんほとんどの人が同じように感じてるのでは?)人たちの物語。

もちろんどの人が読んでもおもしろい物語として読めると思うけれど、きっとアラフォー世代はそうではなくて、自分のことのように受け止めるんじゃないかと思う。それほど素直にこの世代の人の気持ち、やるせなさ、あきらめ、それらへの微力な抵抗、そんな姿をうつしだしている。いまだからこそわかる「この感じ」というもの、同じ世代の人と共有したい。

めちゃ石田さんの作品ぽいといえばそう。IWGPの40代版といってしまえばわかりやすいかも。でもIWGPほどかっこいい人たちは登場しないし、クールな連れもいない。人生に疲れた男女がいるだけ。のたうちまわって苦しんでもがいて見苦しいかもしれない。でもそれでもすごくいとおしい、美しいと感じてしまう。

あー、もっかい読もう。

講談社文庫 2009

石田衣良- 美丘


相変わらず石田さんのこの手の話は美しく、美しいがゆえにうねる波のように猛々しく、激しく、圧倒的なスピードで過ぎ去っていってしまう。

章立てが短くて、すべて過去形で書き始められる文なので、あっという間に読んでしまう。というか読み出したらとまらない。そして物語りも転がり落ちていくようにスピードアップしていく。悲しい寂しい恋の物語。

そのひとがそのひとたるゆえんは何か?姿形?声?考え?
それが失われていくということは、どんな気持ちなのか?そのひとは?そのパートナーは?

めったにないことのはずなのに、すぐとなりでおきてしまいそうな、そんな気持ちがわらわらする、物語でした。

角川文庫 2009

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