反田恭平さん@フェスティバルホール

昨年のショパンコンクールで第2位を獲得したのも記憶に新しいピアニスト反田さんのコンサートを聴きにいってきました。ツアーが開催されることを知ったときから、とても楽しみに待っていたコンサートでした。ほんとチケット取れてよかった。

反田さんをそんな昔から知ってるわけではなくて、少し昔にテレビのクラシック系の番組に出演されてたのをたまたま見かけて、その風貌(とくに髪くくってるの)にシンパシーを感じて(笑)なんか真面目一辺倒に見えるクラシック界に(いい意味で)へんな方出てきたなと思ったのですが、その演奏や、話す言葉にすごく感銘を受けて、いつかこの人の演奏を生で聞いてみたいなと思っていたのでした。

僕自身、この一連のコロナ騒動でコンサートというもの自体に全然いけてなかったのもあって、フェスティバルホールもほんと久しぶりでした。このホールは子供の頃からたまに連れて行ってもらっていたホールで、毎回チャームス(だったと思う)のドロップとかマーブルチョコを買ってもらって、それを舐めながらコンサートを聴いて、でも最後には寝ちゃう、というパターンでした。肥後橋の駅も当時はなんかちょっと薄暗くて怖かった記憶もあります。そしてあの赤絨毯の階段が気分を上げてくれるのですよね。登り降りするのが好きでした。

コンサートは本当に素晴らしかった、の言葉でしか表せられません。それ以外の言葉を紡ぐとどんどん印象から離れていってしまう気がして。最初に反田さんが万雷の拍手で迎えられてステージに現れ、ピアノに座って、躊躇なく最初の音を弾いた時の衝撃といったら。3階の一番上の隅っこで聴いていたのですが、その音の大きさに、力強さに、ゾクゾクしてしまい、もうそこからは一心不乱に聴く、反田さんの音だけが存在する時間でした。反田さんが演奏する曲とその作曲家について思いを馳せ、紡がれたのであろう音の数々は、ひとつひとつが心に体に沁み込んでいくようでした。

18時半に始まったコンサートが20分ほどの休憩を挟んで21時過ぎまで。反田さんが自著でも書かれているように、その一回一回のコンサートに全力を尽くす、ということが痛いほど伝わってくる演奏でした。本編が終わって何度もカーテンコールがあった後のアンコールも、まさか4曲も弾いてくれるとは僕も他のお客さんもみんな想像してなかったようで、3曲目くらいにはざわめきが起こってました。サービス精神というより、聴いてほしいという反田さんの熱い想いがあるんだろうなーと思いました。

もう数日前のことなのに、まだ体の奥が興奮している気がします。彼の演奏はしばらくはCDで楽しもうと思いますが、また近くでコンサートある時はぜひ聴きに行きたいなと思います。まだ若い彼のピアノがどう変わっていくのかも楽しみですし、指揮者としてあの台に立ってどんな音楽を聴かせてくれるようになるのかも楽しみです。クラシック音楽などでファンになる人(しかも若い)が出来たこと自体がとても嬉しいです。この先も楽しみ。

PS
ショパンコンクールの時も思ったのですが、反田さんのピアノって多分そう演奏したいからそういう表現をしてるんだと思うのですが、わざと音がぐしゃってなる(濁ったり、違う響きが聞こえたりする)ように弾く時あって、その音になぜか僕はビバップを感じるのです。身近だったら岩佐さんとか高橋さんとか。ハーモニーとハーモニーの間にある得体の知れないサウンド。綺麗にわかりやすく音符が聞こえるんじゃなくて何が鳴ってるのか分からない感じ。反田さんは楽譜の向こう側に、その時代の作曲家自身やピアニストが感じていたり聴こえていたりしたものを想像して演奏しているのかな、と。もし昔のピアニストがそういう風にも弾いていたら、それを聴いたジャズピアニストたちもいただろうし、それがビバップの頃にまで影響してた、と思うと面白いですよね。

【演奏プログラム】

ショパン:前奏曲 第 25 番 嬰ハ短調 作品 45

ショパン:ピアノ・ソナタ第 2 番 変ロ短調 「葬送」作品 35
I. Grave ‒ Doppio movimento
II. Scherzo ‒ Più lento
III. Marche funèbre
IV. Finale. Presto

ブラームス=ブゾーニ:
11 のコラール前奏曲より第 8 曲「一輪のバラが咲いて」 Op.122-8 ト長調

ブラームス:6 つのピアノ小品 作品 118
No. 1. Intermezzo in A minor
No. 2. Intermezzo in A major
No. 3. Ballade in G minor
No. 4. Intermezzo in F minor
No. 5. Romanze in F major
No. 6. Intermezzo in E-Flat minor

~ 休憩 ~

シューベルト:ピアノ・ソナタ第 20 番 イ長調 D. 959
I. Allegro
II. Andantino
III. Scherzo: Allegro vivace
IV. Rondo: Allegretto

〇アンコール曲

グリーグ:トロルド・ハウゲンの婚礼の日
ブラームス:6つのピアノ小品 作品118 No.2 Intermezzo in A major
ショパン:ポロネーズ6番「英雄」
ショパン:ワルツ 第5番 変イ長調 作品42