加藤実秋 – インディゴの夜

加藤さんはまだ2作目。前の「モップガール」が面白かったので名前覚えてて、この本を手に取った。装丁もすっとした感じだったので、きっとするっと読めるだろうなーと思ったのもある。ガッツリ読み込むもの、すっと読めるもの、いろいろ変えて読まないとしんどいし。ちなみに加藤さん、実秋はさねあき、じゃなくて、みあき、です。女性。

「クラブみたいなハコで、いかにもという感じではなくて、DJやダンサーのような男の子が接客してくれるホストクラブ」をコンセプトにオープンした渋谷のはずれにあるclub indigo。フリーライターの晶、そして同じくライターの塩谷がオーナーだが、実際に店を仕切るのは”伝説の男”憂夜。毎夜若い女の子でにぎわうインディゴだが、ある熱心な女性客が殺される。店のNo.1が絡んでいる?謎を解くため警察をよそに晶たち、そしてホストたちが渋谷の街を走る。。。。

この本には晶たち、そしてホストたちが活躍する短編が4つ。どれもすこしひねりがあって引きつけられて面白い。それとホストクラブなのにホストたちがいわゆるじゃなくてその辺にいる感じの賑やかな男の子たちという設定もいいと思う。名前も変だし。ジョン太とか犬マン、TKOにBINGO、山田ハンサムとかとかw。彼らがそれぞれキャラがたってて面白いのもあるし、もちろんもとヤンという晶も、そしてちょくちょく現れるオカマバーのなぎさママ、そして店をとりしきる憂夜が格好良すぎたり。下手をするとかっこいい男たちが格好良く颯爽と活躍してミステリーを解いて回る、みたいな展開になりがちなのに、こういうキャラたちでそうはさせず、でも退屈にもならないようにする(渋谷とかこういう文化圏のことをよく知ってるんだとおもう、加藤さんが)のはなかなか難しいんじゃないかなーと思う。で、軽く読めるのもいい。ま、だいぶ軽いけれど。でもチャラチャラはしてない。いい塩梅。

せっかくだからもう一話一話説明の部分は省けばよかったのになあと、本でまとめて読むと思う。続きもあるようだから、それらもきっと読むだろうなー。まだキャラクターたちの奥、深そうだし。憂夜あたりはたくさんエピソードありそう。

荻原浩さんが書いてる解説がとてもいい感じ。その通りよねぇ。そんな風にはぼくはかけないから、面白かった!とだけ書く。

創元推理文庫 2008

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加藤実秋 – モップガール

初めてよむ加藤さん。わけあり清掃会社にひょんなことから勤めることになる主人公桃子。この清掃会社はおかしな人たちの巣窟だった。しかし彼女はがんばって仕事に勤める。一方、彼女には以前から原因不明の難聴の持病があったのだが、難聴が起こっているとき清掃現場でフラッシュバックに襲われ、たびたびおかしなことになる。鼻が利かなくなったり、幻聴が聴こえたり・・・。

じじいキャラの社長、体力バカ、カッコいい若者、なんているへんな清掃局っていったら、中津賢也氏のまんが「ふぁいてぃんぐスイーパー」を思い出してしまうのだが(ほんとバカみたいなマンガで好き。中津さん好きなのだが、まったく売れないので悲しい)、それとは違って、これはミステリー。主人公の身に起こる超常現象は清掃現場(大概人が死んだ現場だ)のある一種のダイイングメッセージになっている。その現象から清掃現場の裏にひそんだ謎に挑んでいく仲間の翔と主人公桃子。それぞれの事件が解決しないとこの妙な現象は治らないのだ。

軽快なテンポで読めるので短編といえど少し長いのだが、すっと読めてしまう。こういうおかしなキャラたちがでてくる物語は好きだし、怖くないミステリーも好きだし、やたらと謎が謎を呼ぶようなものでもないので、気持ちいい。

世の中に実際にこういう清掃業者はいる。人が死んだ現場やごみ屋敷の片付け、消臭など誰も引き受けたがらないこんな仕事をやっている人たちの動機は「われわれがいないと世の中がたちゆかない」という使命からだそうだ。現代社会は利便性・快適さの裏にそれを支える人たちが必ずいるのだ、ということをこの物語は暗に語ってくれている。とくに死の現場というのは普通の生活者からは程遠いところに追いやり、意識の外へ置いてしまっている。しかしそれは誰にもやってくるものなのに。

このシリーズ、もっと続けて欲しいなー。

小学館文庫 2009