北森鴻 – 支那そば館の謎

久しぶりに北森さんの本。これはまた別のシリーズ。もともとは怪盗とまで呼ばれた男がひょんなことから貧乏寺の住職に助けられたことからその寺(京都に実在する)の寺男として働くことになるのだが、なぜか彼のもとには京都でおこる怪事件が舞い込んでくる。

主人公の見事な行動力と推理力、住職のとぼけているが的を得たアドバイスにより事件の真相は徐々に明らかになっていく。しかし最後の決めては主人公の昔取った杵柄、怪盗の技術、そして仲間たち。

どこか愛すべきキャラの主人公とその周りの人間たちが軽妙なタッチで生き生きと描かれ、読み飽きない長さの短編、そして京都ならではの風物、食べ物、文化などなど、京都好きな人にもぐっとくる文章がとても楽しい。おいしいもの食べたくなるなぁ。

このシリーズのほかの本も読みたいねぇ。

光文社文庫 2006

北森鴻 – メビウス・レター

ある作家のもとに届けられる謎の手紙。その手紙の内容から昔の事件を思い起こし悩むその作家。しかし読者にはその作家と事件の接点は明かされず、その他にもいろいろな事件が、関わりありそうでなさそうな具合に起こり、やがてそれらがひとつに繋がっていく。そしてそれらはその手紙の内容となにか符号し、やがて作家は追い詰められていく。

最後までどうなるかわからない、しかも伏線が多くて読み進むのが難しく、複雑だが、面白い。引き込まれた。そして最後にすべてがひっくり返って、なるほど!とオチがつく。見事な構成と見事なタネ。うーん、見事。じっくり考えながら読んだらわかるのかもしれないけれど、没頭してしまったら、最後までわかんなくて、楽しめた。

講談社文庫 2001

北森鴻 – 親不孝通りディテクティブ

初めてよむ北森さん。読みやすいと薦めてもらった作品。

博多にすむ、天神の屋台の主、テッキと、表立っては結婚相談所の調査員の仕事をしているキュータ。この学生時代の友人2人組がひょんなことから持ち込まれた事件をつぎつぎと、華麗とはいえないけれどなんとかドタバタと解決していく。

6つのショートストーリー。章毎にテッキとキュータの一人称がかわっていくので、最初読み慣れないと、おや?とおもったりもしたけれど、2人とも主人公だから、こういう書き方っておもしろいな。キャラもちゃんと違ってるし。でも2人の見てるところ、ストーリ上でのそのときの立ち位置、時間の経過、なんかが交互にずれながらなので、おもしろいとおもってさっさと読んでいると、なんかわからなかったりするので、じっくり細部まで読みながら想像しながら読む方がいいのかも。

2人の描写もさることながら、博多のあの街の感じとか息吹とかが身近に感じられて、また行きたくなる。それと、北森氏も好きだからなのだろう、(話の設定ではテッキの屋台はカクテルバーである)いろんな美味そうな酒の数々(作り方書いてる)がでてくるのも素敵。

もっと大きな事件というか題材で長編にしてもらいたいなぁ。短編だとどうしても物足りなさ、というか話の展開が急すぎる(見せられてない部分が結構ある)ので、ストーリーとか謎解きとかがすっと落ちてこないことがあるなぁ。

講談社文庫 2006