坂木司 – 和菓子のアン

初めて読む坂木さん。最近洋菓子よりも和菓子に興味が湧いてきたこともあって手にとった。タイトルも可愛らしいし。高校を卒業していまいちやりたいこともなく浪人するでもなく目標を持てなかった18才の主人公・梅本杏子(通称アン)。せめてバイトでもと考えて偶然出会ったのが、デパ地下にある和菓子やさん「みつ屋」さん。

食べることに目がないアンだが和菓子についてはまったくの素人。そこを毎日どたばたしながらバイトをこなしていく。このみつ屋には個性的なメンバーが。美貌の中におっさんが隠れている店長・椿、可愛い見た目なのに元ヤンの同僚・桜井、知識豊富で職人希望でイケメンなのに中身は乙女な立花、そのほかにもフロアの他店にも面白い人が。そしていろんなお客さんがやってきて、その度教えられ成長していく。

和菓子の美味しさもだけど、名前にまつわる由来、豊富なお菓子の種類、そしてアンの成長していく姿。読んでいてワクワクする。そして和菓子美味しそう。最近和菓子が好きになってきた。洋菓子も美味しいものいっぱいあるけれど、あの和菓子の一つ食べたらすごく満足する感じや、中に封じ込められたいろいろなもの、可憐さ、などに今更気づいた。歳をくうと味覚の嗜好も変わるのかな。なんせ美味しそうな物語で、嬉しくなるようなお話たち。

続編もあるようなので、早く読みたいな。

光文社文庫 2012

楽天ブックスで詳細を見る
Amazonで詳細を見る

坂木司 – ホテルジューシー

hoteljuicy

大家族の長女に生まれて、親代わりに弟や妹の面倒を見たり、家事をしたりして育ってきたヒロちゃんは、すごくしっかりもの。何事もきちんとしていることが好き。大学の卒業旅行の費用を稼ぐために沖縄・石垣島のリゾートホテルでバイトをする日々だったが、ある日そこのオーナーに頼まれて那覇のホテルを手伝いにいくことに。それまで宿の仕事で充実していた彼女は、そのホテル・ジューシーで相当面食らうことになる。。。

昼行灯で夜中しかしゃんとしないオーナー代理(なぜかオーナーはいない)、勝手に人のものをいじったりする掃除担当の老姉妹、突然いなくなる同僚、ワケありの宿泊客などなど、ヒロちゃんは翻弄されつつも成長していく。

きちんとしていることはいいこと。でもそれが全てにおいて正しいこととは限らない。沖縄の(いささか誇張された)アバウトな感じと何事もきっちりしたい性格の間で悩むヒロちゃん。何が正しいのか、自分はどうしたらいいのか?

最初はたんなる青春ドタバタ劇っぽい内容だったり、沖縄のあの感じ(行ったことある方ならわかりますよね)がいろいろ描かれてて楽しい物語だなーとか思っていたけれど、後半に移るに従って、坂木さんが描きたかったであろう、正しいことってなんだろう?というテーマが見え隠れする。ぼくもヒロちゃんに似ているところが多分にある(もっといい加減だけど)ので、ヒロちゃんがオーナー代理に言われる言葉が心に刺さってくる。

正しくないから正したい。自分がいなければ回らないから手を出したい。主観的にはいいことだと思えても、本当はどうかわかんないし、実際物事は怒ってみないとわからないし、自分がいなくても世間はまわる。そんな単純なことをいつの間にか、一生懸命であるがために忘れてしまう。そういうことってままある。ほんと自分によくあてはまるような。

いつかまた沖縄にいけたら、もうすこしゆるりとしてみたいな、と思えた本でした。美味しそうなものいっぱい出てきたなあ。

角川文庫 2010

Amazonで詳細を見る
楽天ブックスで詳細を見る