小山薫堂 – フィルム

これも古本市で気になって手にとってみた本です。とくにタイトルが気になって。小山さんは映画「おくりびと」の脚本を書かれた方だそうですねぇ。

映像関係とかの仕事を(も)する人の本を読むといつもへーっと思うのが、タイトルの付け方のうまさというか、いい感じの言葉をうまく選ぶなーということ。この本は短編集だけれど「アウトポスト・タヴァーン」「フィルム」「スプーン」「タワシタ」「パイナップル・ラプソディ」「あえか」「青山クロッシング」「鎌倉の午後三時」「セレンディップの奇跡」「ラブ・イズ・・・・・・」と普通なのもあるけれど、知らない言葉や組み合わせの妙みたいなものがあって、また読んでいくとそのタイトルがどう絡むのか、ってところにへーっと感心したり。どれもが余分なところなく明瞭ともいえるし、あやふや感がなくてすっきりしてるけれど、もっと濁っていてもいいとも思えたり。

この10編のなかでは、彼女とけんかして家を飛び出してしまったもののお腹が減って困り果てる「スプーン」、日記風の書き方で妙なことから仕事仲間たちとBarをつくることになる「タワシタ」、タクシー運転手の悲哀「鎌倉の午後三時」、これこそ映像にしたらとても面白いんじゃないかとおもえるある男の悲しくも嬉しい半日を描く「セレンディップの奇跡」かな。ほかもいいけれど。

どれもすっきり読めて、ある程度重さもあっていい感じ。小山さんのもっとどっしり長いのを読んでみたい気がする。