荻原浩 – なかよし小鳩組

nakayoshikobato

久しぶりに荻原さん。といってもあんまり読んだことないけど。社長と社員2名にバイト1名のすごく小さな広告代理店。そこで働く杉山。彼はアル中でバツイチになってしまってやさぐれていた。娘の早苗が遊びに来てくれると嫌がりながらも嬉しい。そんな広告代理店に大きな仕事が舞い込んだ。ほいほいとクライアントの元にいくと、そこはヤクザの事務所だった。このご時世ヤクザもイメージ戦略をしたいとCI(コーポレートアイデンティティ)戦略を頼んできた。こんな強面の人たちに囲まれて、仕事は成功するのか?

ハードボイルドにもできそうだけれど萩原さんが手がけるとユーモラスなお話になる。もちろん本当のところは怖いんだろうけれど、組員たちもクローズアップされると少しずつその顔がみえてくる。中間管理職だったり、やっぱり人の親だったり。まあ実際本当に怖く感じるようには描かないとは思うけれど、こんなにユーモラスにできるんだなーと。出てくるクセのあるひと、アクのある人もどこか好きになってしまう。

そして、その仕事の行方や会社の尊像とともに描かれるのが杉山の再生の物語で、離婚してしまったけれど、たまに会う娘が家に泊まりにきたり、アルコールをやめてみたり、走ってみたり。元妻のことを考えるようになったり。過去を振り返り、自分を見つめ直して、できる範囲で再び歩き始める様子が、大々的に感動的に描くわけじゃないけれど、すんと胸にしみてくる。いいお話でした。

登場人物というか、この広告会社が舞台の別の(前の)作品があるそうなので、それも読みたいな。

集英社文庫 2003

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荻原浩 – サニーサイドエッグ

「ハードボイルド・エッグ」の続編。今回もハードボイルドに憧れるもなりきれない探偵最上俊平が難事件に挑む。

前作が犬がらみだったからか、本作は猫がらみ(笑)。しかもロシアンブルー。ロシアンブルーって猫の中でもちょっと違う感じよねぇ。そしてもうひとつのキーワードは”2”というか表裏というか、ダブルというか。。。同時に同じ種類の猫の捜査を頼まれる最上。ひょんなことから押し付けられた秘書(?)の派手な女子高生とともに気楽に調査を始めるが、その裏になにやらややこしそうな影が・・・・

2作品続けて読んだためか、今回はなんとなく展開が読めたというか、前作に少し構成が似ている気がする。最上のいちいちうっとおしいまでのマーロウ度が減っている気もする。が、同じく前作で関わりをもったマーロウを愛する警官とのやりとりはなんか面白い。

テンポ感もなんとなく落ち着いた感じだったけれど、やはり前作同様すすすっと読めた。なんでもない愚痴を聞いてるつもりがいつの間にかえらく重い人生相談の解決を請け負ってしまったかのような滑らかさ。でもこの作品のいいところはシリアスなもの描いているのにシリアスになりすぎない味付け加減。だから軽く読める。でもちょっと考えさせられる。

というのと、やっぱ猫がたくさん出てくるので猫好きにはちょっといい(笑)猫をよく観察してるなーと思われる箇所多数。だし、猫についてまたいろいろ知ることできた、かも。

創元推理文庫 2010

荻原 浩 – ハードボイルド・エッグ

フィリップ・マーロウに憧れ、その言動を真似て生きていく孤独な探偵最上。ハードボイルドな生き方とその探偵業に憧れるが、舞い込む以来はペット捜索ばかり。ある日秘書にと雇おうとした女性は憧れのグラマーではなく和装の婆さん。一体この先どうなるのやら?

軽妙な語り口と、最初からテンポのある文章で、矢継ぎ早に場面や対象が変わっていくので、車にのって車窓を眺めているように飽きずに物語りがつづいていく。そのこまかな事柄たちが実はひとつずつ小さな伏線となって気づくと大きな崖の淵にきている、というような見事な構成。すばらしい。でもそれらがシリアスにならないのは、自称ハードボイルドだけれど、なにかしら抜けのある主人公最上と、時折口にするマーロウのセリフのギャップ感とかユーモア。

やがて一人の身近な人物の殺人事件から、おおきな土地権利取引のウラ話が浮上し、そこに絡むヤクザ、そしてペットの犬。すべてが綺麗に解決するかと思いきや、実は巧妙に糸を引いていたのは・・・・。悲しく驚きの結末。うーん、おもしろい。

双葉文庫 2002

荻原浩 – 神様からひと言

分厚い本なのだけれど、面白くて一気読みしてしまった。目疲れた・・・・

もしあらすじを書いたりすると結構シビアな仕事の話とか情けない男のさえない恋愛話のミックスよ?みたいなことになっちゃうのだけど、登場人物の豊かさと、話の展開の仕方、興味そそられる仕事の内容等々でぐぐっと引き込まれてしまう。でも何よりも荻原さんの文体のユーモアさが随所ににじみ出てて、どんなとこでもほっとさせられるような文章で、リズムよく読めてしまう。まるでしゃべってるかのような文章。

いわゆるお客様窓口(渉外ともいうかな)ってとこってどんなところかまったく想像つかないけれど、たぶんかなりシビアな部門だと思うのだが、なぜこのひとにかかるとこうもすーっとした感じになるのかな。もっとハードボイルドな感じに描く人よーけいそうだが。

あと3度ほどでてくる「ジョン(と名づけられてる)」という人。会ってみたい(笑) なんかアドバイスしてもらえそう。

光文社 2005

荻原浩 - 神様からひと言
荻原浩 – 神様からひと言