大阪城音楽堂フェスティバル 2023

去年に引き続き行われた「大阪城音楽堂フェスティバル JAZZ & Heritage 2023~ジャズと豊臣の石垣」、無事盛況にて終えられました。お越しいただいたみなさま、本当にありがとうございました!開演後も雨天に見舞われましたが、それを吹き飛ばすかのような音楽と声援で、とてもいいコンサートになったと思います。

雨の行く末を心配しながらの開場でしたが、すぐにたくさんの方が入場されて来て、このフェスティバルへの期待をひしひしと感じました。開演してからは断続的に続く雨の中にも関わらずみなさん熱心に聴いていただけて、それに応えて出演者もボルテージが上がり、熱いステージを繰り広げられたのだと思います。

個人的には北村英治さんと並んで演奏したことがとてもいい経験になりましたし、またデニスさんにお会いできたのも夢のようでした。木村さんは面白すぎるし、Hanaさんの歌声に力をもらったし、BLITZも小柳さんも、光丸師匠も、韻シストも、どれもMITCHが好きな人ばかり集めたと言った通り、素晴らしいステージの連続だったなと思います。

改めて、前日の雨の中からたくさんの準備をしてくださったスタッフのみなさま、会場関係のみなさま、協賛していただいたみなさま、出演したみなさん、そして何よりいらしてくださったみなさま、本当にありがとうございました。MITCH、今年も素敵な時間をありがとう&お疲れさまでした!また来年もあるといいなー!

北村英治さん、そしてDennis Wilsonさんと

お会いしたことや演奏をお聴きしたことは何度かある北村さんだけど、初めて横に並んでみてその音色の美しさにノックアウトされました。で、どうなってるんやろ?とガン見してましたw 楽屋にも押しかけていろいろ教えて頂いたり。本当に優しい方。そして御歳94とは全く思えない若々しさ。

デニスさんは北村さんの友人でたまたま日本へ来てた彼を北村さんが連れてきてくれたそうなのですが、70-80年代のカウントベイシー楽団におられた方で、擦り切れるくらい聴いた「モントルー77」「On the road」などでも演奏してらっしゃるし、その頃のベイシー楽団の来日公演にも来てたそうなので高校生の頃見てるはずなんですよね。そんな方と同じステージ踏むとは!トロンボーンのシャウトがめちゃくちゃカッコよかったです。

なんだか子供のようにはしゃいでしまいました^^;

BLUE GIANT

先週公開されたばかりの映画「BLUE GIANT」を観に行ってきた。実は原作の漫画「BLUE GIANT」自体は一度しか読んだことない(しかもヨーロッパ編が始まったとこらぐらいまで)のだけれど、ジャズが主題だし、主人公はテナー吹きだし、何より紙面から伝わってくるアツさ(ジャズがオシャレとかかっこいいとか難しい、のような今までの固定概念的なイメージじゃなくて、とにかくアツさが前面に出まくる感じ)にとても心奪われたので、映画になったときに一体あの演奏シーンがどう描かれるのだろう?というのにすごく興味があって。

10冊の漫画を2時間の映画にしているので、ストーリーは最初の方がだいぶ省略されている感じで(それでも話はわかるけれど)、主人公のあのアツさがどうやって育まれていったのかはわかりにくいのが少し勿体無いなーと(もしかして単なる天才少年だと思われちゃうかも。彼がジャズといかに出会って、いかにそのアツさを、ジャスを、テナーを好きになったかという前提をもう少し描いて欲しかったなあ)思ったけれど、とくにバンド”JASS”を組んで以降の演奏シーンはとてもカッコよかったし、アニメだからこそできる感じになってて素晴らしかった。

まあぼくが主人公にえらく共感してる(どっちかいうとエモーショナルな演奏が好き)からだとは思うけれど、かなりデフォルメされた演奏中の映像や、差し込まれるエフェクトの感じ、あれらが「ああ、演奏してるとき、そんな風に感じることあるなあ」と思うものだったので、嬉しくなった。BLUE GIANT(真にすごい演奏のときは青い炎のように感じられる、という逸話から)ということを表現してたのだと思うけど、それ以上に何か映像が音楽体験的だったように感じられた。ああいうエフェクト感とかカメラワークって実写ではかなり難しいし、実際のミュージシャンにやらせたらめちゃくちゃ大変だろうなのはよく分かるので、アニメだからこそできたことで、しかもほんとうまく表現したなーと感じた。

主人公たちのバンドの音自体は、テナー宮本大役は馬場智章(昨年聴きに行ってめちゃカッコよかった)、ピアノ沢辺雪祈役は音楽全体も担当した上原ひろみ、タイコ玉田俊二役は石若駿。彼らがどんな音を聴かせてくれるのかもとても楽しみだったけれど、まだバンド結成時(タイコ玉田に関してはずぶの素人)のときの音が面白くてw 僕もそういう経験あるからなんとなく想像できるけれど、経験豊かな人が素人ぽい演奏するのって難しい。どこか上手なところが見え隠れしてしまうw(とくにまだ発展途上の人がそれでも精一杯演奏してるのを真似するのはとても難しいと思う)でもそこから各人がレベルアップして、バンドとしてもまとまっていく過程で、演奏もどんどんよくなるし、ラストシーンは本領発揮的な素晴らしい演奏で、アニメの映像とも相まっていいライブを観たような気持ちになれた。いいシーンだった。これは漫画だけではできなかったなあと。

一番注目していた扱われる音や音楽自体もだけれど、演奏も原作のアツさを損なうことなくそれ以上のものを素晴らしく表現できてるなーと思えた。いい映画だったな。

聴く鏡Ⅱ – 菅原正二

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以前読んだ「聴く鏡」の続編。岩手の一関にあるジャズ喫茶ベイシーのマスター菅原さんの著作。季刊ステレオサウンドに連載されている記事をまとめたもので、Ⅱは2006年から2014年にかけて書かれたもの。つまり東北の震災をまたいでいる。

この本も、ベイシーのあの丸テーブルで菅原さんが喋っているような気分になってくる。レコードをかけながら、メガネを上げ下げしながら。前作同様日々のお店の音やオーディオ機器との格闘や、音楽仲間、ミュージシャンとの楽しい話などたくさんだけれど、JBLの社長がやってくる話や、逆にアメリカに招かれる話がとても楽しい。そしてそれらの中で描かれる社長も技術者もみんなが、音楽を聞いて感動しているエピソードがとても熱くなる。いいオーディオをつくる人たちがいいリスナーであるのはとても楽しくうれしい事。どの文章からも音楽が好きでたまらないという気持ちがあふれていて読んでいて胸が熱くなる。だからまた早くあのお店へ帰りたい。

そして地震があってお店がぐしゃぐしゃになった話、そして落ち着くと音楽を聞きたいと人が集まってきた話、やがて東北のジャズ喫茶があつまってコンサートをする話などなど読んでいると、7年前のあの頃のことや、ずーっと走った三陸の海岸の無残な姿が蘇ってくる。それでもそこからみんな立ち上がって、またあんなすごい音を聞かせてくれて本当にうれしい。感謝しています。

実は先月ベイシーに訪れて、菅原さんには挨拶もせず片隅でずーーーーーーっと音楽に浸った。あの大音量(でもちっともうるさくない)を全身に浴びていると、耳だけでなく、体がジャズそのものに作りかえられていくような気分さえした。音楽的にどーのこーのというのもあるけれど、何を聞いても最初に感じるのは、かっこいいだろう、という吹き込んだジャズメンやエンジニアや、それらに息吹を吹き込む菅原さんのニヤリとした顔。いつか何日も通いつめたり、本のエビソードにあるように、夜中までわいわい騒いだりしてみたいな。

と、この記事を書いている今日、2018年6月18日の朝に大阪北部を震源とする地震があった。もうすっかり忘れかけていた23年前の震災のことを揺れたその瞬間に思い出して、とても怖い思いをした。最近地震がやたらと多いけれど、心のどこかで遠くのことと思い込んでいたよう。でもいつ足元で起こってもおかしくないんだということを改めて思い直す。悔いなく生きていきたいし、今日出せる精一杯の音を出していきたい。

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