初めて読んだ俵さんの小説。ずっと昔に彼女の短歌が流行ったころに、「このひとの文字使いって魔法みたい」とつくづく感心したことがあったが、それから触れることもなく長い時間がたってたが、今回この本を読んでみて、やはり短歌の魔法に感心しきってしまう。
2人の男との間で微妙なさざなみが起こるようにゆれる主人公の気持ちが丁寧に語られる小説。そのポイントポイントで短歌が挿入される。思わず「へーっ」といってしまうような言葉遣いがにくい。
恋愛。結婚。出産。あたいらのような今の世代の人間には選択や自由の幅がひろくて幸せだ、といえるかもしれないけれど、その分どうしたらいいのかわからない不安に常に付きまとわれているから、単に幸せね、とも言えないように思う。
中央公論新社 2006