江國さんの小説。まるでウエハースのように、ふわふわとした、すぐに壊れそうな、でも凛としてそこにある、そんな景色が見える。
このひ との小説(とくに恋愛の)のなかでも、かなりじわっとしたほうだとおもう。ほとんど変化のないような日常しか描かれていないけれど、事態はじわりじわりと 深刻な闇を抱いてやってくる。そんなじわり感がまるで優しさであるかのように錯覚してしまえるような文章。哀しいとまではいえないけれど、かなりハラハラ してしまう。こんな恋愛、こわいやろなぁ。
でもなぜか、よく心に届く。よくわかってしまう。
角川春樹事務所 2001