乃南アサ – 幸福な朝食

これがこの人のデビュー作だとは・・・・強烈すぎ。何作か読んでるけれど、どれも人間の心理の微妙さ、エグさ、グロさ、そんなものを実に明白にインパクト 大で描いてるので、読んでいてしんどくなったりもするのだけれど、それ以上に物語がおもしろいし、先の読めない、でもちゃんと落ち着くそんなストーリーが 見事で、読んでいてまったく飽きない。

子供の頃は周囲とは一線を画して器量よしとして生まれた主人公はその美貌を一番役立てられる仕事 として芸能界を目指そうとするが、彼女にうりふたつな女性が先にデビューをしてしまう。そこから起こる二番煎じとしての悲劇。何をしてもぱっとせず、あの 人に似ている”だけ”の人になってしまい、そこで抱いた心の傷により違う人生を選んでいくのだが、悲劇の運命は彼女を手放したりはしなかった・・・

と ても才能があって、その才能と同等の才能があるひとがいて、片方が先に明るみにでたとき、もう片方がどうなってしまうのか。そんなこと考えた事なかったけ れど、それがこの物語のような姿形に関わること(つまり自分とは切っても切れない)であったばあい、後者はどんな心境になるのだろうか。また芸能人であっ たばあい、もし自分にそっくりな人が、とくに女性であれば、その女性としての幸せを満喫している自分とそっくりの人間がいるとしたら、どう思うのか。想像 するにもしきれない世界。

でもそんなことを身を切り刻むかのような描写をもって、主人公の苦悩とそれゆえの人生の変遷、そして自己崩壊してしむようすを隠す事なく描き上げているもんだから、ほんと読んでてしんどいのだけれど、でも面白い。この人、すごすぎると思う。

幸福な朝食
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