中山可穂 – 天使の骨

初めて読む中山さん。古本屋さんでなんとなく手にとった一冊。タイトルがなんとなく気に入って。

一応このお話の前のお話が別の作品として あるので、つづきということになるのだけれど、この作品単体でも読めるようにとつくってあるそう。自分が主宰していた劇団を失い、作家である事もやめ、人 生そのものにも希望をなくしてしまったミチル。彼女の心が生きる欲からはなれていくに従って、彼女には他の人には見えない羽が傷ついた天使たちが見えるよ うになる・・・さらに彼らは増えていくのだ。

世界を放浪し、さまざまな人に出会い、別れ、傷つき、優しさにふれ、そんななかで少しずつ変化してく彼女のこころ、そして明かされていく過去の出来事たち。彼女のなかでそれらのピースがうまくはまって行くに従い、天使たちは姿を消していく。

ミチルのせつなさが突き刺さってくるかのようなスピードのある文章と、展開がはやいけれど十分に描かれている彼女の日々がどんどん流れ込んでくる。彼女がどうなってしまうのか心配で一気に読んでしまった。決してオーバーでなく、彼女の後姿を追っているような気分になる。

世間に、世界に翻弄されて、自分が希求していたものを見失ってしまう。それを運命というのかもしれないけれど、その翻弄のなかにあるちいさな希望を掬うことができたら、またあらたに天に舞い上がれるのかもしれない。

天使の骨
天使の骨

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