とある事務所につとめる女性の恋愛の独白。結構長編なので、一度読んだだけだとこの物語というか、書き口の凄さを感じきれなかったけれど、それでも、迫力ある物語だった。
プロローグではその事務所の男性の視点で始まるのに、いつのまにやらその女性の視点にすり替わっている。これが見事というか、物語の構造の複雑さと、その女性の心理の複雑さを見事に表しているように思える。
最初はちょっとおとなしい、そんな女性像を想像して読み進むが、どんどん狂気を孕んでいく様子が、こわい。エピローグまでしっかり読むと、プロローグとのつながり、視点の、見え方の違いがわかって、わぉ!と思うようなたくみな文章。うーん、すごいなぁ。
でも、もっかい読まないとなぁ。
角川文庫 2002