「鍵」という小説の続編にあたるそう。先にこっちから読んでしまった。でも登場人物や背景は同じでも違う題材なので、前後しても大丈夫。
聴覚障害のある人というのはいまは身近にはいないが、昔は少しつながりがあったのだけれど、彼らの気持ちや考えていることなんて意識したことなかったし、耳が不自由なことってのは単に耳がふさがった状態だ、という認識ぐらいしかなかったけど、聴こえないということでどれほど不自由な生活、コミュニケーションの難しさ、社会システムからの孤立、人々の無理解、なんかがあるのかということの考えを改めさせられた。自分が・・・と思い描いてみても想像しきれない。
そんな障害によって社会からはじかれた存在と、甘やかされ育ちうまく社会適合できない若者、彼らは立場はぜんぜんちがっているけれど、もしかすると同じ気持ちをもってしまうかもしれない。どう生きていくかによって違いは出るけれど、世間からは同じように扱われてしまうかもしれない。
いまの(といってもこの本が書かれたのはもうずいぶん前だけれど)社会の、とくに核家族化した社会のひずみ、ゆがみと、障害をもつものの世界を見事にリンクさせて、人とのつながりがどうあってほしいのか、ということを考えさせられる本だった。
講談社文庫 1999