とにかく江國さんの文章は好き。このひとの本を読み始めると、例えば江國さんふうにいえば「わたしはどうしようもなく、たちまちそのとりこになってしまう」て感じかな。このがらくたもその例外に漏れず、読み出したとたんその世界にどっぷりつかってしまった。
「彼のすべてを所有したい、その存在も不在も」なんて、思いつきもしない感覚だし、よくよく考えるととっても恐ろしいような気がするのだけれど、江國さんはそれを素晴らしい恋愛のおはなしに、マジックにしてしまう。読んでみるとやっぱり少し形おかしくゆがんでいるような気もするのだけれど、不快な感じもいやらしい感じもまったくせず、清潔に透明な光がさしているよう。でもこの物語の主人公柊子のようなのっておかしい、と思う人たくさんいるとおもうけれど。
対比ででてくる少女美海がその子供でいてでも大人な、ある意味まっとうな視点でいることがこの物語をまた立体的にしているとおもう。まっすぐな視線がみつめるものは、大人たちの理解できない関係を照らし、彼らになにか考えさせる。それは若い人だけがもつものか。
このひとの物語を具体的にカタチにして感想いうことなんかできない。白いシーツと赤紫のベルベットと青い海と木のカウンター、タバコの煙とフレッシュな香水が混ざったようなおはなし。色は言えるけれど、形はいえない、のような。
でも素晴らしく素敵。
新潮文庫 2010