ネットを介して出会った男女・・・それでは今では珍しくもない話だけれど、彼らはお互いに性を偽っていた、つまり男は女性になりすまし、女は男性を装い・・・・、しかしこの2人はお互いにネットの中で信頼関係を築き、徐々に必要不可欠な相手となっていく。時がたち、2人はついに「会って直接話してみたい」という欲求を我慢できなくなり・・・・
設定だけでもなるほど石田さんうまいとこ突いてくるなぁと感心したのだけれど、描き方も主人公である2人を短いスパンで切り替え続けるというのが、ネットのチャットのようだし、それにより時間の経過を同時進行で無理なく描くということに成功していてすごいなーと思う。ネットが必需品な人間にはよくわかるネットをやってる人が感じる感覚、バーチャルな世界だからこそリアルな気持ちが素直にでる感じ、メールというある意味手紙と話す言葉の両方の特徴と短所を持つ道具、そんなものを説明なくうまく伝わるように描いている。
この本を読んで、なぜネットだとリアルの人間関係とは違う関係が生まれるのか、ネットおかまやネットおなべになりすましたくなる感覚、そんなものがわかったような気がした。石田さんも描きたかったはこういうことじゃないのかな、人間のコミニュケーションというのは一体どうやって成り立っているのか?
ネットだと出会いには姿形はない。つまり視覚による先入観がない。どんな人間でも出会いは均等に平等であり、だからこそ端末の前にいる人間の中身の部分同士が直接ふれあうことができる。性や年齢を変えて自分から遠い存在になればなるほど、リアル世界での自分とは無関係になり、その分その存在に自分が本当に語りたいことを語らせることができるのではないだろうか。
しかしネットでいい関係を築けたとしても、それがそのままリアル世界に延長されるとは限らない。リアル世界には姿形があり、社会システムがあり、人々は均等でも平等でもないからだ。
果たしてネットで出会い、お互いに性を偽る、しかしお互いに必要だと感じている2人はどう出会い、ネットでの関係をリアルの世界に持ち出せるのか?実際今どこかでおこっているかもしれない物語。まあちょっと出てくる人物たちがみんなかっこ良すぎる気もしなくはないがー、主人公の男を除いて(笑)
中公文庫 2010