いままでのものよりだいぶ話が軽め、というか、アンダーグラウンドな感じがしない。さらっとした感じ。もしかしてこのところ重たい本ばかり読んでいたからか?マコトを通して語る石田さんの口調がいい意味で軽くて心地よい。
シングルマザーの弱みを描いた「千川フォールアウト・マザー」、ごみ拾いがクール「池袋クリンナップス」、父娘のすれちがい「定年ブルドッグ」、フリーターの現実「非正規レジスタンス」の4短編。表題の「非正規レジスタンス」以外はかなり軽い。ちょっとモノ足らずな感じもするなあ。サルやタカシがあんまり活躍しないからかな?
でも「非正規レジスタンス」(非正規でレジスタンスて面白い言葉の組み合わせよね)はなかなか考えさせられる話だ。現実に池袋だけではなくちょっとした大きな街だったらどこでも今や見かけるようになった話。ちゃんと綺麗にはしているがいつも大きなバッグやキャリーバックをもつ若者たち。一見普通の若者と同じだが、もしかするとかなりの数の住所不定フリーターが混ざっている。彼らは日雇いのアルバイトでしのぎ、ネットカフェなどに生息する。一度このスパイラルに落ちるとほぼ浮上できない。でも彼らは自己責任という名のもとに大きな声で不平も言わず、静かに生きている。帰ることのできる家のある者とそうでないものの差はいったい何か?個を無視して労働力とその対価を交換するだけの社会に未来はあるのか?
そんな問題提起をするこの作品。40代以下の人間なら誰もがすこし思い当たることがあるのではないだろうか?人と人との繋がりでさえ国や自治体から場を提供されないと生まれにくくなっているいまの社会。いざというときに引っかかるべきセーフティネットは本当にあるのか?機能するのか?砂粒が手のひらからこぼれていくように、我々もどこかに流されていってしまうのではという不安しかのこらない今。結局それらを変化させるのは自分たちでしかないのだろう。
文集文庫 2010