本当に久しぶりに辻さん。だいぶ読んでしまっているのもあるけれど、なかなか最近出会わないので。でもこの本ももう3年前のものか。相変わらず辻さんの筆は鋭く、少し突き放すかのような一見乱暴に見えるのだが実はすごくやさしい、まるでツンデレ(といってしまうとすごく安っぽいが、うまい言葉が見つからない)のような文体が、読みながらどんな話が待ち受けているのかという期待と不安を(結構不安な気持ちになってしまう)ないまぜにして投げつけてくる。
昔、突然だがまるで必然のような出会いをした主人公潤吾と紅(ホン)。若く希望にあふれていたふたりは当然のように恋に落ちるが、やがて小さな行き違いから暗雲がやってきた。そして7年後作家になった潤吾がソウルを訪れたとき偶然にもまた紅と再会し・・・・。
物語では最初どうした別れがあったのかは明かされないが、それは言葉だけでは越られない国境のようなものだった。文化の違う人間、愛を抱いていたとしても、お互いを理解するのは難しい。理解したと思っていてもそれは勘違いだったかもしれない。
辻さんの小説はいつも読み終わる寸前までどういう結果がまっているのかわからずにドキドキする。この本も最後の最後まで「そうなのか。裏切られるのか?」とドキドキした。爽快感とやるせなさ、暖かさと寂しさ、なにかいろんな感情が宙に浮いた上体で集まりやがて霧散していく、そんな気分になった。
読み終わってから気づいたけれど、これ韓国人作家の孔枝泳さんとのコラボなのね。「冷静と・・・」と同じパターンね。でも探して読もう。
幻冬社文庫 2009