辻さんでこのタイトルだとどうしてもZOOって歌を思い出してしまうけれど、それとは関係ないのかあるのか。久しぶりに読んだ辻さん。巻末に辻さんの著作一覧が載っているのだけれど、辻さん久しぶりだなと思ったのは道理で写真とか絵メインのやつ以外はほとんど読んでる。気づいてなかったな。まぁ、辻さんの本は好きだがまた読み返すかどうかはわからないけれど。
この本はある2人の文通だけで綴られた作品。親に捨てられ孤児として育ち人生に何の希望も持てない17歳の女の子と、同じく親に捨てられたが養父母に拾われなんとか育ったという二十歳過ぎの男。養育施設のある人を通して知り合った(男から女の子に文通が持ちかけられる)2人だが、「絶対に会わない」というルールのもと、そのときの本当の気持ちを語り合う。それを通して2人の愛とはまた違う信頼関係が築かれていくことになるのだが。
こういうパターンだとなんとなく先が読めてしまうのだけれど、辻さんが用意したストーリーはやがて全然違う様相を見せ、意外な結末を迎える。なるほどと思うけれど、救いがあるのかないのか、わからない、受け止め方によるのかも。希望も何もない女の子が生きる希望や愛というものを享受できるようになる/なったのか、というあたりが読ませどころ。
キャラが2人しかいないので(正確には違うけど)、彼らが書いた(という設定の)文章を読んでそこから勝手に想像する彼ら2人の像が楽しい。女の子のほうの文はいかにも女の子っぽいのだけれど、男のほうの文章って、わざとそうなのか、若い男がなんだかちょっと大人っぽく書こうとして書ききれてなかったり、読んでいて恥ずかしかったりする感じが、もしかして辻さんの狙い通りなら、すごいなぁと思った。