百田尚樹 – 輝く夜

クリスマス・イブをひとり寂しく過ごすことになった女性の物語5つ。どれも短編ながらぜんぜん違うシチュエーション、人物像なんかで描いていて、ちっとも飽きずに、でも短いからといって単純な内容でもなく、しっとりと読ませてくれた。さすが物語を生み出すのうまいなぁ。

願い事が3つ叶うという「魔法の万年筆」、偶然拾ったとても見てくれの悪い猫は実は…「猫」、若くして大病を患ってしまいせめて人並みの幸せを感じてみたかったと願う女性「ケーキ」、旅先でのちょっとしたウソが思わぬ遠回りを招く「タクシー」、度重なる不幸の痛手からあてどなく街を歩いた先で立ち寄った教会「サンタクロース」。どの話もおもしろかったけれど、どれかといえば「ケーキ」。主人公のささやかな幸せが走馬灯のようにまぶたのうらをめぐっていく気がする。

どのお話もうまくまとまってて、いい感じ。逆に言うと綺麗にまとまりすぎている気もするけれど。テレビぽいというか。しかし、まあでも今時そんなにクリスマス近辺が昔ほど特別感はないような気がするのだけれど、これは歳のせいかな。でもほっこりした。

講談社文庫 2010

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