有川浩 – 県庁おもてなし課


実際に高知県にある「おもてなし課」をモデルに、高知県愛をこれでもかーと詰め込んだ有川さんの作品。この作品読むまで有川さんが高知出身だとわかってなかった。「空の中」読んだらわかりそうなものなのになぁ。意識していなかったか。

さて、「おもてなし課」は実際にあって、そこから有川さん自身が観光大使を依頼されたことからこの小説の構想が始まったそうなのだけれど、実際このお話もそういう展開で、だからこそかやたらとリアルさがある。そして実際にお話の中で紹介されるスポットやらイベントやらは実際にあるものだし、出身者の有川さんが描くからというのもあり、お話の”フィクションじゃないさ加減”がすごくて、ほんとにあった話(実際あった話の部分は多いのだけど)みたいで見事。そしてその高知県愛が彼女の父からもたらされたものである、というのもよくうなずけるお話。実際そんな父親いたら楽しいだろうなぁ。

書かれたのは2011年だけれど、20数年前に瀬戸大橋ができてようやく四国が陸続きになり、相次いで明石海峡からのルートやら広島から島々をめぐって今治に到達するしまなみ海道なんかができて四国へのルートは楽になった(それまではフェリーだったから。それも旅情あってよかった。なので時間あったらあえて載ったりする)けれど、実は高知はまだ遠い場所。実際、関西圏から到達するのにもっとも時間かかる都道府県は高知もそのひとつ。四万十なんてどんなに遠いか。高速道路が高知市から少しの辺まで伸びたけれど、他の四国三県に比べると実際にアクセスは悪く、僕自身もながいこといってない。でもすごく魅力的な場所なんだけれど。海は広いし、太平洋を望む海岸に立つと「いっちょやったるか!」て気分になるし、山は深く険しく緑が深い。そして当然食べ物はおいしいし、いうことない場所なのだけれど、なかなか行きにくいのよね。でもそれを逆手にとる、なるほど、街中に住む人間はあの開放感はどこにいっても味わえないもの、不便さの魅力、ってのはこれからもっと求められるものかもしれない。

そして、やはり有川さん作品らしく、きゅんとさせてくれる恋話できゅっと締めてくれるあたりさすがだなと。やもすれば重たそうな話題も、彼女のかかれば明るく未来ある話に聴こえてくるし、なによりわかりやすくて、興味がわく。リアルすぎてどこからどこまでかフィクションなのかわからないけれど、おもてなし課の成長物語はほんと感動してしまった。これが全国でしょぼくれ気味になってる地方で広がればどんなに楽しいか。どの県もちゃんと魅力あるもんね。よそ者には見えて、地元には見えないものがたくさんある。

また行きたいなどっか遠いとこ、そして高知県。「あーー、やっとたどり着いたー、ぐてー」って思えるのも、たまにはいいのよねぇ。

2013 角川文庫

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