いやあ、面白かった!ストーリーが単純というわけではないけれど、はっきりしていて読みやすかった。登場人物もだけれどやはりロケットや技術、町工場、大手重工業なんてシチュエーションも面白いわけで(自分の経験してきたこととかと重なるし)。もちろんこの「下町ロケット」が直木賞を取ったときから気になっていたのだけれど、池井戸さん面白い。文章がわかりやすくてすいすい読めてしまった。理系の話だからかな。
長年ロケットエンジンの研究を続けていた主人公佃はある国家的プロジェクトで失敗し、その責任を感じて辞めてしまう。そして父の築いた町工場を引き継いで社長業をしていた。小型のエンジンを主力製品とする工場だったが、大口契約の取引先からの取引停止や、ライバル企業からの特許侵害訴訟などあって資金繰りに窮してしまう。一方佃自身はロケットへの憧れを捨てがたく独自に研究をすすめていた。その研究の結果取得した特許が、大手重工メーカーの一大プロジェクトの根幹を為す技術であったために、佃製作所を揺るがす騒動に。大手企業と町工場の攻防が(それ以外もあるけど)面白く、そして実に現実的に描かれる。
この話ほんとに面白いなと思ったのは、僕がこの本で描かれるところの帝国重工という企業(現実にはM重工ですな)のようなとこにいたからというのが大きい。だから帝国重工側の人間の立ち振る舞いやら考え方やら組織のありかたなんてのがよくわかる、というか、そうそうそんな感じよねと思わされた。そして町工場。ぼくの父は小さな町工場をやっていた。しかも企業を退職して。この本で絵が描かれるような大きな町工場でもないし、特許をとったり何かを開発したりするようなところではなく、黙々と小さな部品(とくに自転車部品だった)を作るような工場だったけれど、働いている人がみんな家族のようで喜びもつらさも分かち合うような場所だった。描かれる佃製作所はもっと大きな工場でたくさんの人がいろんな考えをもって働いている設定になっていて、働く人たちはここは自分の職場なんだ/金をもらう手段でしかないのだとかいろんな風に思っているんだけど、危機に際すると一致団結するような感じになるあたり、ああ日本の工場だなあという(単純すぎるかもしれないけれど、実際そういうところあるし、そうあってほしい)気がした。僕が育った町の小さな個人経営の工場はみんなそんな感じだったから。
しかしこのお話、夢があっていいな。国産のロケットやジェット機などというものはある技術者たちにとっては長年の夢。それらは戦後解体され多くの技術や人を失った日本の企業が明に暗に持ちつづけてきた夢でもある。まだまだ現段階では純国産で飛ぶものというのは作りにくい(技術的なものもあるだろうけれど外交的なことも大きいだろうし)んだろうけれど、この本で描かれるようなことが現実になったら、うれしいだろうなぁ。そう、スポーツや文化もだけれど、なにか自分たちの技術と力だけで何事かを成し得る、というのは人々や国とか社会にとっても大きな力になるものだと思う。大きな、それこそ国家的なモノ作りは下手をすると談合だ癒着だ天下りだと、モノや技術者とは関係ない世界からの横やりでマイナスイメージが大きくなる感があるが、現場にいる人間たちが大きな夢あるモノを作るというのは何者にも代えがたいロマンがある。単純に「やった!」感が。そういうことを共有できれば、また違う面からこの国を誇れると思うのだけれど、今そういうのすごく希薄で寂しい。モノ作りは金にならんから、もっと安く作れる国があるから、そんなしょうもない理由で先細って行くのは悲しいことだし、生み出されるモノや技術者に失礼。もっともっといろいろできる技術と人間がこの国にはある、と思っていたい。
話が大きくそれちゃったけれど、大企業と町工場が対峙する下りはよその国とこの国の対峙に似ているかもしれない。やっぱりモノ作りは楽しいし、夢がある。この国や人々に足らないのは夢やロマンだ。
解説で村上貴史氏が池井戸さんのいろんな作品を紹介しているので、また見つけたら読もうと思う。池井戸さんおもしろい、しばらく癖になりそう。
小学館文庫 2013
たけいさんご無沙汰ですー。わたしも池井戸さんの本を最近読み出しまして、めちゃくちゃ面白くて、ハマりました!あのドラマでやっていた、半沢直樹シリーズなんですが、読み出したら止まりませんでした。(^人^)この下町ロケットも、かなり面白そうだったので、この前買ったのが、もうすぐ届きます。今後は池井戸さんの作品をチェックしてしまいそうな予感ですわー。( ´ ▽ ` )ノ
ほんじゅさん
えらい返事がおそくなってしまいました。池井戸さんほんとおもしろいですねぇ。半沢シリーズもおもしろいですねー。とまらないかんじです。しばらくざーーっと読んでしまいそうです。また情報交換しましょう