いきなりなんて発想をするんだろう、江國さんは。そしてその野生の雪だるまがいる世界には普通に人間もいて、人間がつくる”野生でない”雪だるまもある。おとぎ話のような、子どもが喜ぶようなお話だけれど、「もっと自由に生きなさい」と大人が言われてるような気もする。
ある豪雪の日に空から降って来た雪だるまの雪子ちゃん。百合子さんの物置小屋に住み着く。冷たいすきま風が絶え間なくはいる小屋が居心地いいという雪子ちゃん。夜更かしとバターが大好き、本を見るのも大好き、でも数字は苦手w 毎夜あちこち散歩をするし、小学校にも遊びにいって子どもたちと雪合戦もしたり。百合子さんたちと語らったりちょっとお酒のんだりトランプしたり。そして夏の間は休眠する、だから夏のことは全然しらない。
結局はいつか「とけちゃう」そうなのだけれど、それだからこそ(本人も知ってる)好奇心旺盛でちょこまか動く姿がかわいい。でも大人なのか子どもなのかわからない感じもしたり。
考え抜いて思いついたという感じではなくて、すっと通り過ぎようとした感覚をしっかり捕まえてそれを大きく膨らませる、それも瞬時に。そして想像豊かに奥行きある世界を産み出す、そんな江國さんの、ある意味江國さんぽい作品だなおもう。しかし字面すら面白いよね、”野生の雪だるま”って。
山本容子さんの銅版画も素敵。
新潮文庫 2013