梨木さんの本は「西の魔女が死んだ」からだったので、順番的に逆になっちゃったし、同じ庭が主題として(でもないか)でてくる作品だけれど違うものとして読めるので大丈夫だった。
ある少女の成長の物語。両親にあまりかまってもらっていないと感じている照美。それは弟の死が原因だった。そんな彼女が昔から近所の子供たちの格好の遊び場所になっている古い洋館”バーンズ屋敷”にふと足を踏み入れる。彼女も昔は弟とここでよく遊んだのだった。この洋館には(そしてそのバーンズファミリーには)昔から伝わる”裏庭”があった。それは現実には見えない別の世界。そこは選ばれた、いや誘われた勇気ある人間だけが足を踏み入れられる場所。どこからともなく誘われた彼女はその”裏庭”に足を踏み入れる。。。
昔話と現在の話、裏庭世界の話、鏡の中の世界などが最初にわわっと出現するので、着いて行くのにちょっと戸惑ったけれど、これゆっくり想像しながら読めばそんな難しいことじゃなかった。バーンズファミリーと照美の父母、そしてその前の祖父祖母の世代のひとたち、彼らがバーンズ屋敷の庭と裏庭を通して日向に影につながっている。孤独を感じる少女照美は、同じく孤独だったバーンズ家のレベッカに誘われて裏庭の世界を旅し、自分のなりたい感じは何なのかということを学ぶ。
児童文学向けだからか、だいぶ大人になって想像力が欠如してきた頭には姿を想像しにくい生き物や人々や世界がひろがってるけれど、これらは逆に子供には想像する余地がたくさんあって面白く楽しめるものなんだとおもう。優しいものはやさしく、怖いものは怖い。恐ろしいものは恐ろしく、楽しいことは楽しい。結構厚みがあったし話がリアルな方向じゃないので景色を想像しながらなのでだいぶ読むのに時間がかかってしまったし、最初はなかなか進まなかったけれど、途中からはテルミィ(=照美)の冒険、一喜一憂に同調してしまって冒険にどっぷり浸かってしまった。
どう感じたか、というのが表現しにくいけれど、よかったなーと思えるお話だった。
第一回児童文学ファンタジー大賞受賞作(1995)
新潮文庫 2001