久しぶりに読む萩原さん。裏表紙のあらすじを読んで面白そうだなーと思ったので手に取った本。7つの短編からなる。
もうすぐ子供が産まれる葬儀社に勤める中堅社員「さよなら、そしてこんにちは」、父親の長年の願いだった田舎暮らしを実現した家族だったが「ビューティフルライフ」、日々のテレビ番組に振り回されるスーパーの売れない売り場の責任者「スーパーマンの憂鬱」、子供番組のヒーローに恋してしまった母親「美獣戦隊ナイトレンジャー」、頑固な寿司屋にやってきた謎の男「寿し辰のいちばん長い日」、ひょんなことから売れっ子になってしまったイタリア料理好きの主婦「スローライフ」、坊主が娘の仏の間に板挟み「長福寺のメリークリスマス」。
どの話も主人公がちょっと変わっているというか、頑固というか、融通が利かないというか、どじくさいというか、普通の人々でまじめに生きているのに、そのまっすぐさ加減が滑稽に映ってしまう、面白い人たちを描く。その滑稽さに笑みがこぼれてしまうのだけれど、ふと考えると自分もきっとこういう部分があるんだろうな、人から滑稽に見えるほど必死になってるところとかあるんだろうな、と恥ずかしかったり、でも嫌でもなかったり、不思議な感情が浮かぶ。
で、どの話も思い切りハッピーでもバッドでもなく、うん、そんなもんよねぇ、的な終わり方をするので、物足りない感じもするのだけれど、それがまたいいところなのかも。昔話を思い出して、ふっ、と笑うような。
すすっと読めてよかった。でももう少しぎゅっとしててもよかったかも。
光文社文庫 2010