初めて十三にある第七藝術劇場というミニシアターにいく。この劇場があるビルにはたまに来るスタジオがあってこの劇場の存在を知ってたけど、なんか怪しげだなーとおもってたけど、いいシアターだった。個人経営かそれに近い感じ、スクリーンは1つだけで、なんか講堂みたい。椅子はだいぶくたびれてたけど(座った席が人気あるところだったから?)居心地はよかった。
友人に勧められてた「YUKIGUNI」という映画を見る。山形の酒田市にあるケルンという喫茶そしてBar、そこに92歳で現役バーテンダーの井山さんというかたがいらっしゃって、彼は60年前に「雪国」というカクテルを生み出した人。この「雪国」は当時の寿屋(いまのサントリー)のコンテストで優勝し、いまや世界的なスタンダードカクテルになっているそう。ほとんどのカクテルが19世紀に考えられたものである中、近年つくられてスタンダードカクテルになるというのは全世界のバーテンダーの憧れだそう。そんな井山さんとケルンというお店と、そしてカクテル「雪国」にまつわるドキュメント映画。
バーテンであること、スタンダードカクテルというもの、井山さんという人物、カクテル「雪国」が生まれた逸話などをいろんなバーテンやお店の人、井山さん自身、彼の子供達が語る。そしてその背景にある井山さんのこれまでの人生、奥さんのこと、お店の変移。ほんとなんでもないドキュメントなのに、小林薫さんの語りと、バックに流れるバラードばかりのジャズ(同じ酒田出身の後藤輝夫さんというテナーの方が吹いてる)が時間をゆったりさせ、まるでバーの止まり木にいてバーテンさんの話をゆっくり聞いている気持ちになって来る。本当にカウンターに立つのが好きで、人と会うのが好きで、という井山さんが身近に感じてくる。いやー、素晴らしくいい映画だったな。こういう感触がする映画はなかなかシネコンとかではかからないもんなあ。長くない上映時間なのにカクテル「雪国」といっしょに60年過ごしたような気分になった。
いい映画だった。あまり上映館や期間は多くないけど、ぜひ。