実は筒井さん読んだことなかったのです。最近興味あって日本のジャズ界を牽引してきたようなジャズメンの逸話を読んだりしているとそこに筒井さんの名前がよく出てきて、全冷中(全日本冷し中華愛好会)やらタモリやら山下トリオ、子供心に怖かった映画「時をかける少女」(大林監督の)、ジャズという言葉に惹かれた「ジャズ大名」とかとか、筒井さん自体を知らなくても興味あったりしたものがいっぱいあって、こりゃ一度腰を据えていろいろ読んでみたいなと思って、タイトルに惹かれて手に取った本。
実は3冊ある、超能力者•火田七瀬が主人公のシリーズものの2つめ。自身の超能力(テレパス=人の心を読むことができる)をひた隠しにし転々とする七瀬。超能力の持主と分かった途端世間からは白い目で見られ、やがて排除しようとされる。それをよく理解している彼女は超能力者のことを理解できるのは超能力者だけであろうと旅を続け、その中で何人のも超能力者に出会い、能力の違いはあるものの、理解しあったり、旅の仲間となったりしていく。
しかし世間のどこかに彼らを抹殺しようとする大きな組織があることに気づき、それから逃れるために逃避行をするが、徐々に追い詰められていく、、、、
何よりもすごいなあと思ったのが、七瀬が超能力者であるということを違和感なくすっと読者に受け入れさせる導入の見事さと、想像で補っていくしかない超能力者という存在の心理的な描写、普通のひととの違いの描き方などなど。説明ぽくなくて、ああ、こんな風なんだとすっと腑に落ちていく。テレパスや念動力、未来予知、時間旅行などなどいろいろな能力者が現れるが、その能力以外は普通の人と同じで、その能力ゆえに傲慢であったり、不安を抱えていたり。能力者同士でも信頼し合えるかどうかは分からなかったり。そういった超能力者がいる社会という、想像しにくいものがあたかも普通に存在しているもののように描がかれていて面白かった。決してアメリカ映画みたいな感じじゃないのよね、すごく日本的。そこがまたいいのかな。
このシリーズの最初の作品である「家族八景」も読まなきゃ。他の筒井さんももっと読みたい。
余談だけど、筒井さんいろいろ知りたくてwiki眺めてたら、日本のSF黎明期にSFのイベントDAICONやってたのを知ってびっくり。SF作家の走りだからそりゃそうか。DAICON(大阪開催のSF大会=大阪コンベンション)で3回目(81年)に初めて素人制作のオリジナルアニメが上映されてすごく話題になって、当時漫画やらアニメに興味があった小学生の僕にもそのウワサが流れてくるほどだった。もともとアニメは好きだったけれど。それを作ったのが庵野秀明や岡田斗司夫らだったというから、すごいなー、子供の頃から未だに同じ人たちの影響受けてて、そのもっと前には筒井さんいたのか、と妙に納得したり^^;
新潮文庫 1975